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Strategy — 最終更新 2026-06-01

EEF Hattie

指導法

教師と子どもの関係性

教師と子どもの間に温かさ・信頼・高い期待がある関係が築かれると、学習成果が向上する。学級経営の土台となるエビデンス。

学習効果
+4ヶ月
3月時点で、通常より約4ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★★★☆
コスト
¥····
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit

EEF Toolkit に教師-子ども関係性の独立したエントリは無い。Behaviour interventions(+4)や Metacognition(+8)の基盤として位置づく。

Hattie (Visible Learning) d = 0.72

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Hattie の メタ分析を統合した教育研究。効果量で指導法を順位づけ">Visible Learning では d=0.72(上限寄り)。独立メタ分析では Roorda et al.(2011, 99研究)が学業成績との関連 r≒0.16-0.19(d≒0.32-0.39)、Cornelius-White(2007, 119研究)が r=0.31(d≒0.65)と報告。Hattie 値は上端、実態は中程度で +4 ヶ月程度 が妥当と判断。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
99 件
総サンプルサイズ
就学前〜高校(エンゲージメントとの関連 k=61・N=88,417、学業成績との関連 k=61・N=52,718)
効果量
学業成績: r≒0.16〜0.19(d≒0.32〜0.39、小〜中) / エンゲージメント: 中〜大
エビデンスの限界

Hattie(d=0.72)の値は上端寄りで、独立メタ分析(Roorda 2011, Cornelius-White 2007)の中心値は d=0.3〜0.65 程度。『関係性』の定義が広く(温かさ・信頼・期待・葛藤など)、測定方法で効果量が変動。ハイリスクな子ほど関係性の効果が大きい傾向。

日本の文脈で考慮したいこと

関係性の重要性は日本の学級経営でも広く認識されているが、効果量を厳密に推定した研究は多くない。日本の学級担任制は 1 人の教師が長時間子どもと関わる構造で、海外(教科担任制)より関係性の影響が大きい可能性があるが、検証は進んでいない。また、30 人以上の学級で全員と質の高い関係を築くには教師の余裕が必要で、業務負荷との関連を無視できない。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(7)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連する学習指導要領

一言でいうと

教師と子どもの関係の質は、学力に直接影響します。 「この先生は自分のことをわかってくれている」「期待してくれている」という実感が、子どもの学びへの意欲と粘り強さを支えます。

なぜ効果があるのか

良好な関係性は、子どもの心理的安全性を高めます。安心できる環境では、わからないことを素直に言える、間違いを恐れずに挑戦できる、助けを求められる——これらが学習を加速させます。 また、教師が子どもを信頼し高い期待を持つ姿勢は、子どもの挑戦への意欲や学習行動を支える要因として報告されています。 逆に、関係が冷たい・管理的な場合、学習意欲の低下や問題行動の増加につながります。

なお「教師の期待が成績を直接押し上げる」という主張は古典的に ピグマリオン効果(Rosenthal & Jacobson 1968)と呼ばれてきましたが、後年の追試・メタ分析で効果量は文脈依存・再現性も限定的と整理されており、本戦略のメタ分析(Roorda et al. 2011 / Cornelius-White 2007)が扱う「関係性の質」とは構成概念も効果量も別物です。本戦略の効果量は教師期待効果ではなく「関係性(温かさ・信頼・期待・葛藤)の質」のメタ分析に基づきます。ピグマリオン効果とラベリング理論の現代評価は 教師の期待とラベルは子どもの未来を決めるか で整理しています。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 朝の会や帰りの会で、一人ひとりに短くても目を合わせて声をかける時間を作る
  • 子どもの名前を呼び、具体的な行動を認める言葉かけを意識する(「〇〇さん、最後まで粘ったね」)
  • 学習面だけでなく、子どもの興味や家庭での出来事にも関心を示す
  • 失敗しても大丈夫だという空気を教室全体で作る。教師自身が「先生も間違えたよ」と見せる
  • 問題行動の背景を理解しようとする姿勢を持ち、行動と人格を分けて対応する

研究からわかっていること

  • 独立したメタ分析(Roorda et al. 2011、Cornelius-White 2007)では学業成績との関連は r=0.16-0.31(d≒0.32-0.65)の範囲で報告されており、中央値で約4ヶ月分の学習効果に相当します。Hattie の d=0.72 は上端寄りの値です。
  • 特に低学年・学習困難を抱える子ども・社会経済的に不利な環境の子どもに対して効果が大きいことが示されています。
  • 温かさと高い期待の「両方」が重要です。温かいだけ(甘やかし)、厳しいだけ(管理的)では効果が弱まります。
  • 関係性の質は、学力だけでなく学校適応・出席率・行動面にも正の影響を与えます。
  • この「関係性が出席にも効く」方向は、海外の大規模評価とも整合します。英国の教育研究財団 EEF が委託した中等学校対象の評価(2026 年)では、出席や家庭連絡を担う職員を配置するだけでは欠席はほぼ改善しませんでした。改善の鍵は役割や仕組みより、学校全体の関係性・文化と個別支援にあると結論づけられています。ただし英国の継続的な欠席は日本の不登校と同義ではなく、上記の効果量もこの評価から導いたものではありません。

注意したいこと

  • 「関係性を良くしましょう」という抽象的な目標ではなく、具体的な行動(声かけの頻度、傾聴の姿勢)に落とし込むことが大切です。
  • 30人以上の学級で全員との関係を均等に築くのは容易ではありません。特に目立たない子どもへの意識的な関わりが重要です。
  • 教師のメンタルヘルスや業務負荷が高い状態では、関係性の質を維持するのが難しくなります。教師を支える仕組みも必要です。

主な参考研究

関連する学習指導要領

  • 小学校学習指導要領解説 総則編 — 「児童の発達の支援」の章で、学級経営の充実と一人一人の児童との信頼関係を基盤とした指導の重要性が明記されています。教師と子どもの関係性は、すべての教育活動の基盤です。
参考にしている情報源
Roorda et al. (2011) The Influence of Affective Teacher–Student Relationships on Students' School Engagement and Achievement
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