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不登校35万人時代 — エビデンスで考える「学びの保障」

過去最多35.4万人。増加の背景、エビデンスに基づく支援策、そして「学校に戻す」から「学びを保障する」への政策転換を考える。

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目次(8)
  1. 過去最多を更新し続ける不登校
  2. 「原因」の見方を変える
  3. エビデンスは何を示しているか
  4. 「学校に戻す」から「学びを保障する」へ
  5. 小学校教員として考えたいこと
  6. 家庭・学校・制度の役割分担
  7. まとめ
  8. 参考資料

過去最多を更新し続ける不登校

文部科学省が 2025 年 10 月 29 日に公表した 「令和 6 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」 によれば、小中学校の不登校児童生徒数は 35 万 3,970 人 で過去最多を更新しました。内訳は小学校 13 万 7,704 人、中学校 21 万 6,266 人。12 年連続の増加 で、1,000 人あたり 38.6 人の規模です。

ただし、増加率には変化が見られます。前年度の +15.9% から +2.2% に鈍化しており、特に中学校では +0.1% とほぼ横ばいです。新規の不登校児童生徒数は 9 年ぶりに減少(15 万 3,828 人) しており、数は増え続けているものの、増加のペースには歯止めがかかりつつあるとも読み取れます。

小・中学校の不登校児童生徒数(令和3〜6 年度) 0 100,000 200,000 300,000 400,000 2021 2022 2023 2024 年度 不登校児童生徒数(人)
出典 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」。4 年間で約 11 万人増加、令和 6 年度は増加率が +2.2% に鈍化。
数値データを表形式で表示
年度小・中学校合計
2021244940
2022299048
2023346482
2024353970

「原因」の見方を変える

不登校の要因として最も多いのは「学校生活に対するやる気が出ない」(30.1%)、次いで「生活リズムの乱れ」(25.0%)、「不安・抑うつ」(24.3%)です。

ここで重要なのは、これらは原因ではなく症状であるという視点です。「やる気が出ない」の背後には、学力のつまずき、友人関係の困難、家庭の問題、発達特性など、複合的な要因が絡んでいます。単一の原因に帰属させるアプローチは、支援の設計を誤らせる可能性があります。

エビデンスは何を示しているか

不登校支援の効果を測定した大規模RCTは、日本にも海外にもほとんど存在しません。これは「効果がない」のではなく、**「効果の測り方が確立していない」**領域です。

ただし、関連する知見はあります。

  • 社会性と情動の学習(SEL) (+3ヶ月) — 自己理解・対人スキル・感情調整を育てるプログラムは、学校適応と学力の両方に正の効果がある
  • 行動への働きかけ (+3ヶ月) — 困難の大きい子への個別計画が、全体への一律対応より効果的
  • 教師と子どもの関係性 (+4ヶ月) — 「この先生は自分をわかってくれている」という感覚が学校適応を支える

いずれも「不登校になった後の対処」ではなく、**「不登校を予防する学級環境づくり」**に関するエビデンスです。

「学校に戻す」から「学びを保障する」へ

2016年の教育機会確保法は、日本の不登校政策における大きな転換点でした。「学校復帰」を唯一の目標とするのではなく、学校外の学びの場も含めた教育機会の保障を打ち出しました。

文部科学省の「COCOLOプラン」もこの方向性を継承し、教育支援センターの充実、ICTを活用した学びの場の整備、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置拡充を掲げています。

小学校教員として考えたいこと

約13万6,000人の不登校児童生徒が、学校内外の専門的な相談・指導を受けていないというデータがあります。この「支援につながっていない子」をどうするかが、最も切実な課題です。

エビデンスの観点からは以下が示唆されます。

  • 予防が対処より効果的SEL関係性づくりフィードバック は、不登校のリスクを減らす学級環境の基盤
  • 早期の気づきが鍵 — 欠席が3日連続したら注意、10日を超えたら組織的対応。早期ほど回復しやすい
  • 「学校に来ること」と「学ぶこと」を分ける — オンライン授業・別室登校・教育支援センターなど、学びの選択肢を複数持つ
  • 教員だけで抱えない — スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーとの連携は、個人の頑張りではなくシステムで対応するということ

不登校は「怠け」でも「家庭の問題」でもなく、学校を含む環境全体の問題です。エビデンスは万能ではありませんが、「何が効きそうか」の判断材料を提供してくれます。

家庭・学校・制度の役割分担

不登校への対応は、単一の主体で完結するものではなく、それぞれが担える領域を分担することが前提になります。

  • 学校: 担任個人で抱え込まず、SC・SSW・養護教諭を含めた組織的対応と、学びを保障するルート(別室登校・オンライン授業・教育支援センター連携)の用意
  • 家庭: 生活リズム・安心できる居場所の提供、本人の意思の尊重
  • 制度・自治体: 教育支援センター、フリースクールとの連携、ICT を活用した学びの場、SC・SSW の配置拡充といったインフラ整備

どれか 1 つに負荷が集中すると持続しません。特に 学校内でも「担任一人で抱える」構造を作らないこと が、エビデンスが示唆する実装上の前提です。

ただし、専門職を配置すれば解決するわけではありません。英国の教育研究財団 EEF が委託した中等学校対象の大規模評価(2026 年)では、出席や家庭連絡を専門に担う職員を置くだけでは、欠席はほとんど改善しませんでした。鍵になるのは役割や仕組みそのものより、学校全体の関係性・文化と、一人ひとりの背景に応じた個別支援の質だと総括されています。なお英国の「持続的な欠席」は日本の不登校より広い概念で、ここでは支援を設計するうえでの原則として参照しています。

まとめ

  • 不登校児童生徒は 35 万 3,970 人(令和 6 年度) で 12 年連続の過去最多。ただし 新規の不登校は 9 年ぶりに減少 しており、動向は変化の局面にある
  • 要因として多い「やる気が出ない」「生活リズムの乱れ」は原因ではなく 症状。単一の原因に帰属させる見方は支援の設計を誤らせる
  • 大規模 RCT は少ないが、SEL関係性づくりフィードバック が予防的学級環境の基盤として示唆される
  • 2016 年の 教育機会確保法 以降、政策の軸は「学校復帰」から 学びの保障 へ移っている
  • 学校内外の相談・指導につながっていない約 13 万 6,000 人が最大の論点。家庭・学校・制度 の役割分担と、学校内での 専門職との連携によるシステム対応 が前提となる

参考資料

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関連する指導法

本コラムで言及した指導法の詳細ページ。エビデンスの強さと効果量を確認できます。

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