← 指導法一覧へ戻る

Strategy — 最終更新 2026-05-05

EEF

指導法

社会性と情動の学習(SEL)

自己理解・自己管理・他者理解・対人スキル・意思決定の5領域を育てる学習。学力にも好影響を与える。

学習効果
+3ヶ月
3月時点で、通常より約3ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★★★☆
コスト
¥¥···
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit + 3 ヶ月 ★★★★ ☆

EEF Toolkit で +3ヶ月・エビデンス★4。Durlak et al.(2011)の 213 プログラム(270,034 人)メタ分析で、学力が平均 11 パーセンタイル向上、社会性・態度・行動にも正の効果。Taylor et al.(2017)が効果の持続も確認。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
213 件
総サンプルサイズ
270,034 名(小学校 56% / 中学校 31% / 高校 他)
効果量
全体 d=0.30(学力は 11 パーセンタイル点の向上、社会性・態度・行動にも正の効果)
エビデンスの限界

プログラム(SEL" data-tip="SELの5領域フレームを定義した米国の組織">CASEL 系など)と実施者(教師 53% / 外部 21%)で効果量が変動。Taylor et al.(2017)は効果の持続を確認しつつも一定の減衰を示す。非英語圏の研究が相対的に少なく、日本の道徳・特活との直接比較は未成熟。

日本の文脈で考慮したいこと

日本には『特別活動(学級活動)』『道徳科』『生活科』という SEL と重なる既存枠組みがあり、感情理解・対人関係・意思決定の要素は既にカリキュラムに組み込まれている。ただし、CASEL のような体系的な 5 領域フレームと、明示的なプログラム(レッスンプラン・評価)という形では整備されていない。中室牧子(2015)は Heckman のペリー就学前研究を引用し、非認知能力の育成が学力と同等以上に重要と論じた。日本の文脈では SEL を『新しいもの』として導入するより、既存の特活・道徳を SEL の枠組みで再構成するアプローチが現実的。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(8)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連する学習指導要領
  8. 日本の研究者による関連知見

一言でいうと

自分や他者の感情を理解し、適切に振る舞う力を意図的に育てる学習です。 自己理解・自己管理・他者理解・対人スキル・意思決定という5領域からなります。

なぜ効果があるのか

子どもが安心して学習に取り組めるためには、自分の感情を扱う力と、他者と関わる力が必要です。 SELが育っている子どもは、ストレスへの耐性があり、対人関係でつまずきにくく、学習意欲も高い傾向があります。 学力と非認知能力は別物ではなく、互いに支え合っています。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 感情を表す語彙(うれしい・くやしい・もどかしい・ほっとした)を意識的に増やす
  • トラブルが起きた時、即座に裁定するのではなく「どんな気持ちだった?」を聞く
  • 他者の立場に立って考える機会を、物語の読みや社会科で意識的に作る
  • 教師自身が自分の感情をオープンに語る(モデリング)

研究からわかっていること

  • 平均的に、学習は約3ヶ月分前進します。情動面の効果はさらに大きいことが報告されています。
  • 学級全体に対する明示的なプログラム(SELカリキュラム)が一定の効果を示します。
  • 効果は学級経営の質と密接に関係し、教師の関わりの質が効果量を大きく左右します。

注意したいこと

  • 「気持ちを言わせる」ことが目的化すると、形骸化します。日々の関わりの質が問われる領域です。
  • プログラムの導入だけで効果は出ません。学級文化全体での取り組みが必要です。
  • 個別の支援が必要な児童には、SEL指導だけで対応するのは難しい場面があります。

主な参考研究

関連する学習指導要領

日本の研究者による関連知見

  • 「学力」の経済学』 中室牧子 (2015), ディスカヴァー・トゥエンティワン. — Heckman et al. のペリー就学前プロジェクトを紹介し、「将来の年収が高いのは学力が高い子よりも非認知能力(自制心・やり抜く力)が高い子だった」という知見を日本語で解説。非認知能力の育成が学力と同等以上に重要であると論じた。
参考にしている情報源
EEF Teaching and Learning Toolkit — Social and emotional learning
Mentioned in Columns

この指導法を扱っているコラム

本指導法を論点として取り上げたコラム。現場の文脈や政策との関係を読むことができます。