一言でいうと
自分や他者の感情を理解し、適切に振る舞う力を意図的に育てる学習です。 自己理解・自己管理・他者理解・対人スキル・意思決定という5領域からなります。
なぜ効果があるのか
子どもが安心して学習に取り組めるためには、自分の感情を扱う力と、他者と関わる力が必要です。 SELが育っている子どもは、ストレスへの耐性があり、対人関係でつまずきにくく、学習意欲も高い傾向があります。 学力と非認知能力は別物ではなく、互いに支え合っています。
日本の小学校で取り入れるヒント
- 朝の会で「今の気持ちを一言」を順番に言う時間を設ける
- 感情を表す語彙(うれしい・くやしい・もどかしい・ほっとした)を意識的に増やす
- トラブルが起きた時、即座に裁定するのではなく「どんな気持ちだった?」を聞く
- 他者の立場に立って考える機会を、物語の読みや社会科で意識的に作る
- 教師自身が自分の感情をオープンに語る(モデリング)
研究からわかっていること
- 平均的に、学習は約4ヶ月分前進します。情動面の効果はさらに大きいことが報告されています。
- 学級全体に対する明示的なプログラム(SELカリキュラム)が一定の効果を示します。
- 効果は学級経営の質と密接に関係し、教師の関わりの質が決定的です。
注意したいこと
- 「気持ちを言わせる」ことが目的化すると、形骸化します。日々の関わりの質が問われる領域です。
- プログラムの導入だけで効果は出ません。学級文化全体での取り組みが必要です。
- 個別の困難を持つ子には、SEL指導だけで対応するのは難しい場面があります。
主な参考研究
- Durlak, J. A., et al. (2011). The impact of enhancing students’ social and emotional learning. Child Development, 82(1), 405–432. — 213件のSELプログラム(270,034人)のメタ分析。学力が平均11パーセンタイルポイント向上。社会性・態度・行動にも正の効果。
- Taylor, R. D., et al. (2017). Promoting positive youth development through school-based SEL. Child Development, 88(4), 1156–1171. — SELの効果がプログラム終了後も持続することを示した追跡研究のレビュー。
- CASEL (2020). CASEL’s SEL Framework. — SELの5つの中核能力(自己認識・自己管理・社会的認識・対人関係スキル・責任ある意思決定)を定義した枠組み。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 総則編 — 「学びに向かう力、人間性等」の涵養として、自己の感情や行動を統制する力、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度が掲げられています。
- 小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編 — 自己理解、他者理解、思いやりなど、SELと重なる内容項目が含まれています。
日本の研究者による関連知見
- 中室牧子 (2015). 『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン. — Heckman et al.のペリー就学前プロジェクトを紹介し、「将来の年収が高いのは学力が高い子よりも非認知能力(自制心・やり抜く力)が高い子だった」という知見を日本語で解説。非認知能力の育成が学力と同等以上に重要であると論じた。