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共同親権が始まった — 学校現場で何が変わるのか、エビデンスは何を言えるのか

2026 年 4 月 1 日施行の改正民法で、離婚後の「選択的共同親権」が導入された。教員にとって何が変わるのか。エビデンスで言えること・言えないことを整理する。

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目次(15)
  1. 2026 年 4 月 1 日から始まった制度
  2. 教員にとって何が変わるのか
  3. エビデンスで言えること、言えないこと
  4. 言えないこと
  5. 言えること
  6. 教員として押さえたい 5 点
  7. 1. 「家族の形」の多様さを前提に
  8. 2. 情報提供は「両親とも同じ」を基本に
  9. 3. 重要な決定は両親の合意を確認する
  10. 4. DV・虐待ケースは「急迫の事情」ルールを知っておく
  11. 5. 専門スタッフ・関係機関との連携
  12. まとめ
  13. 参考資料
  14. 日本の研究・公式資料
  15. 海外の研究

2026 年 4 月 1 日から始まった制度

2024 年 5 月に成立した改正民法が、2026 年 4 月 1 日 に施行されました。離婚後の親権について、これまでの単独親権に加えて、父母の協議で共同親権を選択できる 「選択的共同親権制」が導入されたのがポイントです。

重要なのは、共同親権は義務ではなく選択肢 という点。協議で合意すれば共同親権、合意しない(あるいは家裁の判断で不適とされる)場合は従来どおり単独親権になります。

教員にとって何が変わるのか

法務省の整理では、共同親権下でも親権の行使は次のように区別されます。

場面誰の判断で動くか
進学先・転居などの 重要な決定父母の 合意 が必要
食事・日常の世話・習い事などの 日常の行為どちらか一方が単独で可
緊急手術・DV や虐待からの避難など 急迫の事情どちらか一方が単独で可

学校現場の実務では次の場面が想定されます。

  • 個人面談・保護者会への参加 — 両親の出席希望の扱い
  • 学校からの配布物・連絡の宛先 — 別居親への情報提供の範囲
  • 進路選択(進学先決定) — 両親の合意確認が必要になる場面
  • トラブル時の連絡先 — 緊急連絡網の扱い
  • DV・虐待ケース — 居場所情報の保護、避難の可否

現時点で文部科学省からの包括的な学校向け運用指針は、本コラム執筆時点(2026 年 4 月 18 日)では確認できていません。各自治体・学校で運用を詰めている段階と考えられます。

エビデンスで言えること、言えないこと

このコラムは本サイトの通例として、エビデンスの有無を正直に整理 します。

言えないこと

共同親権そのものの学力・発達への効果を直接示した、日本の大規模研究は存在しません。 制度が始まったばかりなので当然ですが、今後の追跡が必要です。

海外(共同親権が既に標準となっている国々)の研究にはいくつかありますが、法制度・社会通念・家族構造が異なるため、日本の文脈に参照するには慎重な検討が必要 です。

言えること

一方、「親(保護者)と学校の連携」という、共同親権に関連する領域にはエビデンスがあります

戦略効果量出典
保護者との連携+4ヶ月EEF Toolkit
社会性と情動の学習(SEL)+3ヶ月EEF / Durlak et al.(2011)

「保護者との連携」は どんな家族構造でも効果がある というのが EEF の示唆。共同親権・単独親権・再婚家庭・祖父母養育 — どの形であっても、学校が家庭と同じ方向を向くこと が学力にも情緒にも効くというのが、繰り返し確認されている知見です。

SEL も同じです。家庭環境の変化を経験している子どもに対して、学校での情動理解・対人関係の学習 は、家庭の状況に左右されない土台を作ります。

教員として押さえたい 5 点

エビデンスで判断できない制度論と、エビデンスがある指導論を分けたうえで、現場で押さえたい 5 点を整理します。

1. 「家族の形」の多様さを前提に

共同親権はその一形態です。ひとり親家庭・再婚家庭・祖父母養育・里親家庭など、すでに多様な家族構造 が教室にあります。共同親権だけを特別視せず、家庭環境の多様性への意識 を高める機会と受け止めるのが現実的です。

2. 情報提供は「両親とも同じ」を基本に

学校からの配布物・連絡事項は、原則として 両親とも同じ情報にアクセスできる 形が望ましい(家庭の具体的な取り決めによる)。ただし、DV・虐待が背景にあるケースでは居場所情報の保護が最優先。個別事情を聞き取ったうえで対応 を決めるのが基本です。

3. 重要な決定は両親の合意を確認する

進路・転校など「重要な決定」に関わる場面では、片方の親の承諾書だけで進めない 運用が安全です。面談時の同席希望があれば受け入れる、別居親への情報提供の範囲を本人の意思に沿って設計する、など。

4. DV・虐待ケースは「急迫の事情」ルールを知っておく

共同親権下でも、DV や虐待からの避難は単独親権での対応が認められる(民法上の「急迫の事情」)。この点を知っておくと、学校として子の保護を優先する判断がしやすくなります。

5. 専門スタッフ・関係機関との連携

法制度の変更は、学級担任・管理職だけで判断しきれない場面を増やします。校内では SC・SSW・スクールロイヤー との体制整理、学校外では DV・虐待ケースで 児童相談所・配偶者暴力相談支援センター(DV センター)・警察 といった関係機関との連携ルートを、早い段階で整えておくと、トラブル時の判断が迅速になります。

これは「チーム学校」(中央教育審議会答申 2015 / 2024、生徒指導提要 改訂版 2022)の枠組みそのものです。制度判断を担任一人で抱え込まないようにし、組織と関係機関で支える仕組みを整えておきます。

まとめ

  • 共同親権は 2026 年 4 月 1 日施行の 選択的制度(義務ではない)
  • 重要な決定は両親合意、日常と急迫事情は単独可
  • 共同親権そのものの学力効果を示す日本の研究は 存在しない(正直に伝えるべき)
  • 一方、保護者との連携 +4ヶ月SEL +3ヶ月 は家族構造に関係なく効くエビデンス
  • 現場では「家族の形の多様さ」の感度を上げ、DV・虐待ケースは急迫事情のルールを知る
  • 制度判断は担任個人で抱えず、SC・SSW・スクールロイヤーと、児童相談所・配偶者暴力相談支援センター・警察 などの関係機関を含む「チーム学校」の枠組みで対応する

制度が変わっても、学校が家庭と同じ方向を向く という保護者連携の基本は変わりません。エビデンスが言えるのはこの部分。言えないのは「共同親権にすると子の学力がどうなるか」です。ここを混同しないことが、保護者に対して誠実な姿勢だと思います。

参考資料

日本の研究・公式資料

海外の研究

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関連する指導法

本コラムで言及した指導法の詳細ページ。エビデンスの強さと効果量を確認できます。

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