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Strategy — 最終確認 2026-08-31

EEF 日本研究

指導法

学級規模の縮小

学級の人数を減らす取り組み。EEF は +1ヶ月で、日本の研究も同程度かそれ以下。赤林英夫らは先行研究より小さいと評価。ただし格差縮小には繋がらないことも示唆。

学習効果
+1ヶ月
3月時点で、通常より約1ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥¥¥¥¥
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit + 1 ヶ月 ★ ☆☆☆☆

全体平均 +1ヶ月(算数 +2、読解 +1)。確実性評価は 5 段階中 1(very limited)で、ランダム化比較試験でない研究の割合が高いこと、独立評価でない研究の割合が高いこと、結果のばらつきが説明しきれていないことの 3 つで下がっている。20人以下、特に15人以下まで減らさないと明確な効果は出にくい。教師が指導方法を変えられる場合に効果がある。

日本研究 + 1 ヶ月 ★★★ ☆☆ 赤林英夫・中村亮介(2014, 慶應義塾大学)

横浜市の公立学校の学校別平均点を使い、学級編制の上限(40人)前後で人数が不連続に変わることを利用した推定。小学6年生の国語で正の効果が出たが、大きさは1人減るごとにテストの偏差値が0.1上がる程度で、著者自身が先行研究よりはるかに小さいと評価している。上の +1ヶ月は、著者らが先行研究と比べる際に用いた8人の縮小で換算した値で、実際の政策である40人→35人の5人減なら0.6ヶ月ほどにとどまる。小6と中3で国語と算数の4通りを分析したうち、効果が確認できたのは小6の国語だけで、しかも裕福な地域の学校に限られ、学力格差の縮小にはつながらないことが示された。より大規模で新しい日本の研究(1,064校・小4〜中3)は、10人の縮小でも0.1〜0.7ヶ月相当と、これを下回る値を報告している。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
127 件
総サンプルサイズ
組み入れ 127 研究(148 報告・55 集団・41 か国、幼稚園〜第 12 学年)。効果量を取り出せてデータ統合に進んだのは 10 研究で、そのうちメタ分析で合算(プール)されたのは読解 5 研究・算数 4 研究(フランス・オランダ・米国、いずれも幼稚園〜第 3 学年)。STAR 実験を分析した研究は 45 件あり、データ統合に進んだ 4 件も、同一データを扱うため事前に定めた選択規則が適用できず、合算されずに個別に報告されている
効果量
読解はランダム効果加重 SMD 0.11(95% CI 0.05〜0.16)の小さい正効果。算数は負だが統計的に非有意
主要エビデンスレビュー
エビデンスの限界

メタ分析でプールできた研究が読解 5 件・算数 4 件と少なく、読解は 5 件中 4 件、算数は 4 件すべてが非ランダム化研究(唯一の RCT はフランスの第 1 学年を対象にした研究で、算数の結果を報告していない)。大規模 RCT である STAR 実験(1980 年代・K-3)は 45 研究が分析しているが、データ統合に進んだ 4 件も同一データを扱うため選択規則が適用できず、合算せず個別に報告された(4 件はいずれも読解 0.17〜0.34・算数 0.15〜0.33 の正で有意な効果。ただし著者らは、STAR の結果はより肯定的だが全体の結論を変えるものではなく、平均効果は小さいとしている)。効果はせいぜい小さい一方で費用は極めて高い。著者らは、効果の個人差を踏まえると少人数学級が一部の子どもにとって逆効果になる可能性を排除できないと注記している(教科を限定しない記述)。算数については効果が統計的に非有意で、負の効果があるかどうかは不確かだとしている。学級規模の縮小それ自体より、減った人数で教師が指導方法を変えられるかが効果の条件になる(EEF)。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の学級規模は国際的に大きめで、小学校では35人学級への移行が完了し、中学校でも段階的に進んでいる。赤林・中村(2014)の分析では小学6年生の国語で正の効果が確認されたが、大きさは先行研究より小さく、効果は裕福な地域ほど大きいため、格差縮小の政策目標とは整合しない ことが示された。また、教師が指導方法を変えられるかどうかが効果の分かれ目であり、「人数を減らすこと」自体より「減った人数でどう指導するか」の設計が重要。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(10)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連する政策動向
  8. 関連する学習指導要領
  9. 日本の研究者による関連知見
  10. 関連読み物

一言でいうと

1学級あたりの人数を減らす取り組みです。 学力への効果は、20人、場合によっては15人を下回るくらいまで減らさないとはっきり現れないというのが現在の評価です。必要なコスト(教員の増員)に対しては、EEF Toolkit は他の介入の方が効率的だとしています。

なぜ効果があるのか

学級の人数が減ると、教師は一人ひとりに目を配りやすくなり、個別のフィードバックや関わりの機会が増えます。 ただし、人数が減っただけで指導法が変わらない場合、効果は限定的です。 重要なのは「人数が減ったことで、何が変わるか」です。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 学級規模を変えることは現場の判断を超える領域ですが、TT・少人数指導との組み合わせで実質的な「小集団」を作ることはできます
  • 一時的に学級を分割する場面(算数の習熟度別など)を活用する
  • 小規模学級を活かす指導法(個別の対話・個別最適化)を意識的に取り入れる
  • 「人数が減ったから自動的に良くなる」とは考えず、何を変えるかを意識する

研究からわかっていること

  • 平均的に、学習は約1ヶ月分前進します(EEF Toolkit +1)。算数に限ると+2ヶ月。
  • 効果がはっきり現れるのは、20人、場合によっては15人を下回るまで減らした場合です。EEF は、5人程度の縮小では効果が小さくなると注記しています。
  • 低学年での効果は、現行の EEF では「英国の Reception(4〜5歳)・Key Stage 1 のうち、事前の学力が低く家庭が経済的に不利な子どもに効果が見えうる」という限定的な示唆にとどまります。年齢一般の記述は 2021 年時点の EEF にはありましたが、2025年10月の更新で削除されました。
  • 2025年のメタ分析(Opatrny ら)では、出版バイアスはほとんど検出されず、そのうえでテネシー州STARを分析した研究と15人未満の学級を除くと効果はごく小さいと報告されています。

注意したいこと

  • 人数を減らすこと自体に大きなコストがかかるため、他の介入(個別指導・少人数指導)の方が費用対効果が高い場合があります。
  • 学級規模の縮小は、指導法の改善とセットでないと効果が出ません。
  • 国や自治体の制度に依存する領域であり、現場の裁量だけでは動かしにくい側面があります。

主な参考研究

  • Opatrny, M., Havranek, T., Irsova, Z., & Scasny, M. (2025). Publication bias and model uncertainty in measuring the effect of class size on achievement. Journal of Labor Economics. — 66件の研究から2,819の推定値を集め、出版バイアスとモデルの不確実性を補正したメタ分析。補正後の効果は、テネシー州STARを分析した研究と15人未満の学級を除いて「ごく小さい」とし、STAR自体は追試で再現されていないと指摘する。
  • Schanzenbach, D. W. (2014). Does class size matter? National Education Policy Center. — 学級規模に関する研究文献を総括した政策ブリーフ。学級規模の拡大は短期の学力に加えて長期の人的資本形成も損なうと示唆され、影響は低所得層・マイノリティの子どもで大きいとしたうえで、政策担当者は他の予算用途と慎重に比較検討すべきで、費用はかかっても結果的により費用対効果の高い政策になりうると結論している。教員の質を高める代替策については、政策として設計・実施・評価まで行われた例がほとんどないと指摘する。
  • Finn, J. D., & Achilles, C. M. (1990). Answers and questions about class size: A statewide experiment. American Educational Research Journal, 27(3), 557–577. — 米国テネシー州STARプロジェクト(6,500人のRCT)。少人数学級(13〜17人)で学力が有意に向上。
  • 赤林英夫・中村亮介 (2014). Can small class policy close the gap? An empirical analysis of class size effects in Japan. Japanese Economic Review, 65(3), 253–281. — 横浜市の学校別平均点を使い、学級編制の上限前後で学級規模が不連続に変わることを利用した推定。小学6年生の国語で正の効果が出たが、著者らは先行研究よりはるかに小さいとしている。掲載版は購読が必要なため、上記の数値は公刊前のワーキングペーパー版(TCER Working Paper E-51, 2012)と、下記の著者本人による解説にもとづく。
  • Ito, H., Nakamuro, M., & Yamaguchi, S. (2020). Effects of class-size reduction on cognitive and non-cognitive skills. Japan and the World Economy, 53, 100977. — 1,064校の小学4年〜中学3年を対象に、複数年のパネルデータで推定した日本の研究。10人の縮小による効果は学年により0.01〜0.07標準偏差にとどまり、非認知能力への効果は確認されなかった。こちらも掲載版は購読が必要なため、数値は公刊前のディスカッションペーパー版(RIETI DP 19-E-036)にもとづく。
  • Reducing class size. Education Endowment Foundation, Teaching and Learning Toolkit. — 2021年7月のレビュー(41研究)では効果量 +2ヶ月だったが、2025年10月の更新(63研究)で +1ヶ月に引き下げられ、教科別の向きも読解優位から算数優位に入れ替わった。コスト(¥¥¥¥¥)対効果の観点では他の介入を優先すべきとの評価。

関連する政策動向

小学校の学級上限を40人から35人に引き下げる移行は2021年度に始まり、2025年度に全学年で完了しました。中学校でも2026年度から段階的に35人学級が実施されます(令和8年度: 中1、令和9年度: 中1・2、令和10年度: 中1〜3)。EEF Toolkit の評価では、費用対効果の観点で他の介入(フィードバックの改善、メタ認知指導など)を優先すべきだとされています。人数が減ったことで生まれた余裕を「何に使うか」を意識的に設計することが、この政策の効果を最大化する鍵です。

コラム: 少人数学級にどれだけの効果があるか?政策とエビデンスの対照表

関連する学習指導要領

  • 小学校学習指導要領解説 総則編 — 「指導方法や指導体制の工夫改善など個に応じた指導の充実」の節で、専科指導やティーム・ティーチングなどの工夫が言及されています。学級規模そのものへの直接的な言及はありません。

日本の研究者による関連知見

  • 中室牧子 (2015). 『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン. — 少人数学級を含む教育投資の費用対効果を教育経済学の観点から扱い、限られた予算を何に使うべきかを論じている。

  • 赤林英夫 (2015). 「少人数学級政策の教育効果の不都合な真実」 SYNODOS. — 慶應義塾大学教授。少人数学級推進と子どもの教育達成度向上との因果関係を統計的に立証することの困難さを指摘。自身の推定結果については「効果が確認できた」とも「あまり期待できない」とも読めるとして解釈を保留する一方、一律の推進は教員の質の低下と学校間・教室内の格差拡大を招きうるという「不都合な真実」を挙げ、「少人数学級制度の一律の推進は、私が学校教育の改善の中で最も望むことではない」と述べている。リンクは Internet Archive の 2026-03-08 保存版(原記事は 2026-09-07 時点で 404)。

関連読み物

参考にしている情報源
EEF Teaching and Learning Toolkit — Reducing class size
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