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Strategy — 最終更新 2026-07-04

Hattie

指導法

ジグソー法

子ども一人ひとりが異なる部分を担当し、全員の知識を合わせないと課題が完成しない協同学習の手法。研究間の効果量のばらつきが大きく、再現性に課題がある。

学習効果
+3ヶ月
3月時点で、通常より約3ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★☆☆☆
コスト
¥····
対象
全教科
中学年 · 高学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

Hattie (Visible Learning) d = 1.20

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Hattie の メタ分析を統合した教育研究。効果量で指導法を順位づけ">Visible Learning では d=1.20 と報告されているが、研究数が限られ、他のメタ分析の推定値から大きく乖離した上端寄りの値。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
43 件
総サンプルサイズ
43 実験研究(K-12 〜 高等教育、2020 年代のメタ分析)
効果量
Hedges' g = 0.77(95% CI [0.55, 0.98]、I² = 91.03%)
主要メタ分析
エビデンスの限界

研究間の異質性が極めて高い(I² = 91.03%) ため、平均効果量 g=0.77 をそのまま代表値として扱うことはできない。信頼区間も広く [0.55, 0.98]。さらに Stanczak et al. (2022, 5 実験の内部メタ分析)では学力への ES ≈ 0.00 と効果が確認できなかった。効果の大きさは実施の質(相互依存の明確な設計、個別の説明責任、グループ構成、教材の準備)に強く依存する。EEF Toolkit に独立したエントリは無く、協同学習(Collaborative learning、+5 ヶ月)の一例として扱われる。

日本の文脈で考慮したいこと

ジグソー法は Aronson et al. (1978) が 1970 年代アメリカの人種統合教室で、異なる背景の子ども同士の偏見や対立を減らす 目的で開発した手法で、日本の学級文化でも実践可能である。ただし 研究間の結果が極めて一貫性を欠いている(I² = 91.03%、研究間のばらつきを示す指標で 100% に近いほどばらつきが大きい)ため、「必ず大きな効果が出る」とは言えない。SNS・YouTube 等では Hattie の d=1.20 を根拠に「絶大な効果」と紹介されることがあるが、これは研究数の少なさと異質性の高さを考慮しない過大評価である。実施の質(相互依存の明確な設計、個別責任、グループ構成、教材の準備)が結果を大きく左右する。日本では班活動が既に広く実施されているため、「個別の説明責任」「積極的な相互依存」というジグソーの設計原則を意識することで効果が期待できる。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(9)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本独自の系譜 — 知識構成型ジグソー法
  4. 日本の小学校で取り入れるヒント
  5. 研究からわかっていること
  6. 注意したいこと
  7. 主な参考研究
  8. 関連読み物
  9. 関連する学習指導要領

一言でいうと

学級を小グループに分け、各メンバーが異なるパート(資料・視点・役割)を担当し、それぞれが「専門家」として学んだ内容をグループに持ち帰って教え合うことで、全体像を完成させる協同学習の手法です。

なぜ効果があるのか

ジグソー法が注目される理由は「相互依存」の設計にあります。自分が学んだ部分は、自分しか持っていない。だから全員が貢献しなければ課題が完成しない。この構造が、協同学習でありがちな「一部の子だけが活躍する」問題を解決する可能性があります。また、人に教えることで自分の理解が深まる 効果も同時に発揮されると理論的には期待されます。

日本独自の系譜 — 知識構成型ジグソー法

日本の教育現場で「ジグソー法」と呼ばれる実践には、Aronson の元祖だけではなく、東京大学 CoREF(Consortium for Renovating Education of the Future)の三宅なほみ氏が提案した「知識構成型ジグソー法」 という日本独自のバリエーションが含まれます。

2 つの系譜は 設計思想が異なります:

  • Aronson 元祖(1978〜) — 人種統合教室で 異なる背景の子ども同士の偏見や対立を減らす ことが主目的。集団間関係の改善に軸足
  • 知識構成型(三宅なほみ / CoREF、1990 年代〜) — 構成主義の学習観に基づき、複数視点の資料を学習者が統合して新しい理解を構築する 認知的な狙い。学力形成に軸足

このため、効果量(コーエンの d、効果の大きさを示す指標)として引用される研究(Hattie の d=1.20、Cochon Drouet 2023 の g=0.77、Stanczak et al. 2022 の ES ≈ 0.00 など)は 基本的に元祖ジグソーを対象にした研究 であり、知識構成型ジグソー法の独立した効果量エビデンスは現時点で限られます。現場で実践するときや研究レビューに触れるときは、どちらの系譜の研究かを確認する ことが正確な判断につながります。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 社会科で地域の特色を4つに分け、各自が1つを担当して調べ、班で統合する
  • 理科で実験の手順を分担し、全員のデータを合わせて結論を出す
  • 国語で物語の場面ごとに担当を分け、全体の読みをつなげる
  • 「専門家グループ」(同じ担当同士)で先に学び合い、その後「ホームグループ」に戻って教え合う二段構えが効果的
  • 低学年では簡略化し、2人ペアで「あなたはAを、私はBを読んで、お互いに教え合う」形から始める

研究からわかっていること

  • Cochon Drouet et al. (2023) の最新メタ分析(43 研究)では学力への全体効果量 g = 0.77、ただし 95% 信頼区間 [0.55, 0.98] / 異質性 I² = 91.03%(研究ごとの結果のばらつきが極めて大きいことを示す指標)と、再現性の前提が整っていない
  • Stanczak et al. (2022) の内部メタ分析(5 実験、厳密な無作為割当)では学力への効果量(ES、効果の大きさを示す統計値)がほぼゼロと報告
  • Hattie の Visible Learning は d = 1.20(コーエンの d、効果が大きいとされる値)と大きな値を示すが、研究数が少なく上端寄りの推定
  • EEF Toolkit に独立したエントリは無く、協同学習(Collaborative learning、+5 ヶ月)の下位手法として扱われる
  • Aronson (1978) が 1970 年代アメリカの人種統合教室で 異なる背景の子ども同士の関係改善 を目的に開発。ただし効果量研究で主に測られてきたのは 学力への効果 で、集団間の関係改善そのものへの効果は Bratt (2008) がほぼゼロと報告するなど一貫しない

注意したいこと

  • メディアで紹介される「効果絶大」は慎重に受け止める。再現性が確立していない手法
  • 個人の担当部分が難しすぎると、その子が「教えられない」状態になり機能しない。難易度の調整が重要
  • 時間がかかるため、毎時間使うのではなく単元の中で効果的な場面を選ぶ
  • 最初は教師がかなり丁寧に手順を示す必要がある。慣れるまで数回は練習が必要
  • 「相互依存の明確な設計」「個別の説明責任」が実施の質を決める。形だけ班活動に分けるだけでは効果が出にくい

主な参考研究

関連読み物

関連する学習指導要領

参考にしている情報源
Cochon Drouet et al. (2023) — Effects of the Jigsaw method on student educational outcomes
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