一言でいうと
子ども一人ひとりの学力・興味・学び方に合わせて、学習内容やペースを調整する指導です。文科省が掲げる「個別最適な学び」の核心にある考え方ですが、効果は実施の質に大きく左右されます。
なぜ効果があるのか
すべての子が同じペースで学ぶという前提は現実と合いません。個別化学習は、子どもが「自分に合った難易度」で学ぶことで、つまずきを減らし、到達度を上げます。GIGAスクール端末の普及により、技術的な実現可能性が大きく高まりました。
日本の小学校で取り入れるヒント
- GIGAスクール端末のAIドリルを活用し、子どもごとに異なる問題を提示する
- 単元内で「基礎コース」「発展コース」を用意し、子ども自身が選ぶ設計にする
- 全員が同じ課題をやる時間と、個別に取り組む時間を授業内に両立させる
- 教師はファシリテーター(進行役)として、つまずいている子を見つけて個別に関わる
- 個別化しすぎると「みんなで学ぶ」体験がなくなる。協同学習とのバランスが重要
研究からわかっていること
- EEF が報告する効果量は+4ヶ月です。ただし平均の背後のばらつきが大きく、この値をそのまま期待できるとは限りません
- 小学校段階に限ると+3ヶ月で、中学校段階(+4ヶ月)より小さくなります。自分の学びを管理する力が育っているほど効果が出やすいためだと EEF は説明しています
- 教師の役割が「指導」から「個別課題の管理」に寄ると、質の高いやりとりの時間が減ります。EEF は一斉指導の置き換えではなく補完として使うことを勧めています
- デジタル技術を使った個別化は、使わない個別化と同程度の効果と報告されています
注意したいこと
- 「個別最適」が「孤立学習」にならないよう、協同学習とのバランスを意識する
- AIドリルに任せきりにすると、教師が子どもの学びの実態を把握できなくなる
- 個別化の設計には教師の負担が増えるため、持続可能な仕組みが必要
- 「個別最適な学び」の政策と、実際の研究知見の間にはギャップがある可能性を認識する
主な参考研究
- Connor, C. M., Morrison, F. J., & Katch, L. E. (2004). Beyond the reading wars. Journal of Educational Psychology, 96(2), 305–317. — 個別化された読みの指導が学力向上に効果的であることを示した研究。
- Pane, J. F., Steiner, E. D., Baird, M. D., & Hamilton, L. S. (2015). Continued progress: Promising evidence on personalized learning. RAND Corporation. — 個別化学習を実施している学校の生徒は、そうでない学校より学力が高い傾向を報告。ただし対照群は無作為化されていないマッチング比較で、因果の推定としては弱い。
- Individualised instruction. Education Endowment Foundation, Teaching and Learning Toolkit. — 2021年7月のレビュー(198研究)で+4ヶ月、小学校段階は+3ヶ月。確実性評価は 5 段階中 2(limited)。一斉指導の置き換えではなく補完として使うことを勧めている。
関連する政策動向
文科省は「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を掲げています。個別化学習のエビデンスは+4ヶ月(小学校段階は+3ヶ月)であり、協同学習(+5ヶ月)やメタ認知(+8ヶ月)と組み合わせることで、政策の意図に沿った効果が期待できます。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 総則編 — 「指導方法や指導体制の工夫改善など個に応じた指導の充実」の節で、児童や学校の実態に応じ、個別学習やグループ別学習、繰り返し学習、学習内容の習熟の程度に応じた学習などの学習活動を取り入れることが挙げられています。「個別最適な学び」はこの延長線上にあります。