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Strategy — 最終更新 2026-05-11

Hattie

指導法

ブロック学習の落とし穴

「かけ算20問 → わり算20問」のように同じ種類を連続で練習する方式。直後は成績が良く見えるが、長期的な定着では問題を混ぜる「交互練習」に劣る。

学習効果
-1ヶ月
3月時点で、通常より約1ヶ月分学力が低下する傾向
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥····
対象
算数 · 全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

Hattie (Visible Learning) d = -0.10

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

ブロック練習は短期(練習直後)では正答率が高く『できている感覚』を生むが、遅延テストでは交互練習群に劣る(Rohrer & Taylor 2007)。Dunlosky et al.(2013)はブロック練習を『低い有用性』、交互練習を『中〜高い有用性』と評価。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
59 件
総サンプルサイズ
k=238 効果量、158 サンプル(就学前〜成人、絵画・数学・単語など素材横断)
効果量
全体で交互練習 Hedges' g = 0.42。材料別: 絵画 +0.67 / 数学 +0.34 / 単語 -0.39(単語暗記のみブロック練習が有利)
エビデンスの限界

効果は学習材料の性質に強く依存する。カテゴリ間が類似していてカテゴリ内が多様な複雑材料(算数の問題タイプ判別など)で効果が大きく、単純な単語暗記ではブロック練習が有利になる。習得初期はブロック練習で基本を作り、定着段階で交互練習に切り替えるのが現実的。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の算数ドリル・漢字練習帳は典型的なブロック練習型で、見かけの成績(練習時の正答率)は上がるが長期定着は劣る。保護者や管理職に『練習中の正答率が下がっても問題ない』と説明するには、望ましい難しさ(desirable difficulty) の概念共有が必要。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(7)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ「できている感」が生まれるのか
  3. 研究が示す具体的な差
  4. ではどうすればいいか
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連する学習指導要領

一言でいうと

「かけ算の問題を20問やってから、わり算を20問」——この練習の仕方をブロック学習と言います。日本のドリルや教科書のほとんどがこの形式です。

ブロック学習は練習中の正答率が高く「できている」と感じやすいのですが、1週間後・1ヶ月後のテストでは、問題を混ぜて練習した子の方が成績が良くなります

この「できている感覚」と「実際の定着」のズレが、ブロック学習の落とし穴です。

なぜ「できている感」が生まれるのか

ブロック学習では「次もかけ算だ」と分かっているため、どの解き方を使うかを自分で判断する必要がありません。同じパターンを繰り返すだけなので、練習中はスラスラ解けます。

しかし実際のテストや日常では「これはかけ算? わり算? 足し算?」と自分で判断する力が求められます。ブロック学習ではこの判断力が育ちません。

認知科学ではこのズレを**「流暢性の錯覚」**と呼びます。スラスラできる = 身についている、とは限らないのです。

研究が示す具体的な差

ブロック学習交互練習(問題を混ぜる)
練習中の正答率高い(89%)低い(64%)
1週間後のテスト低い(20%)高い(63%)

※ Rohrer & Taylor (2007) の算数のRCTより。交互練習群は1週間後に3倍の正答率

練習中に「難しい」「混乱する」と感じるのは、脳が深く処理している証拠です。これを**「望ましい難しさ(desirable difficulty)」**と呼びます。

ではどうすればいいか

ブロック学習が「悪い」のではなく、ブロック学習だけに頼ることが問題です。

  • 新しいことを学ぶ段階 → ブロック学習(同じタイプを繰り返し)で基本を身につける
  • 定着させる段階 → 交互練習(前の単元と混ぜる)で判断力と長期記憶を鍛える

具体的には:

  • 算数の宿題で、今週の問題に先週の問題を2〜3問混ぜる
  • 漢字テストで「今週の漢字」+「前に習った漢字」を出す
  • 小テストを単元完結にせず、過去の内容も含む累積型にする

注意したいこと

  • 子どもは「混ぜると難しくなった = 自分ができなくなった」と感じやすい。「難しいのは良いことだよ」と理由を説明することが大切
  • 保護者から「ドリルの点数が下がった」と指摘されることがある。練習中の正答率は学力の指標ではないことを共有する
  • 日本の教科書・ドリルのほとんどがブロック形式なので、教師が意識的に混ぜる工夫が必要

主な参考研究

  • Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35(6), 481–498. — 交互練習の効果を算数で実証したRCT。1週間後のテストで3倍の差。
  • Rohrer, D. (2012). Interleaving helps students distinguish among similar concepts. Educational Psychology Review, 24, 355–367. — 交互練習が「概念の区別力」を育てることを理論的に説明。
  • Bjork, R. A. (1994). Memory and metamemory considerations in the training of human beings. In Metacognition: Knowing about knowing. — 「望ましい難しさ(desirable difficulty)」概念の原典。
  • Dunlosky, J., et al. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. — 10の学習法を評価。ブロック練習は「低い有用性」、交互練習は「中〜高い有用性」。

関連する学習指導要領

関連項目: 交互練習(インターリービング) — 交互練習の効果と具体的な実践方法を詳しく解説

参考にしている情報源
Rohrer (2012) — Interleaving helps students distinguish among similar concepts