一言でいうと
「かけ算の問題を20問やってから、わり算を20問」——この練習の仕方をブロック学習と言います。日本のドリルや教科書のほとんどがこの形式です。
ブロック学習は練習中の正答率が高く「できている」と感じやすいのですが、1週間後・1ヶ月後のテストでは、問題を混ぜて練習した子の方が成績が良くなります。
この「できている感覚」と「実際の定着」のズレが、ブロック学習の落とし穴です。
なぜ「できている感」が生まれるのか
ブロック学習では「次もかけ算だ」と分かっているため、どの解き方を使うかを自分で判断する必要がありません。同じパターンを繰り返すだけなので、練習中はスラスラ解けます。
しかし実際のテストや日常では「これはかけ算? わり算? 足し算?」と自分で判断する力が求められます。ブロック学習ではこの判断力が育ちません。
認知科学ではこのズレを**「流暢性の錯覚」**と呼びます。スラスラできる = 身についている、とは限らないのです。
研究が示す具体的な差
| ブロック学習 | 交互練習(問題を混ぜる) | |
|---|---|---|
| 練習中の正答率 | 高い(89%) | 低い(64%) |
| 1週間後のテスト | 低い(20%) | 高い(63%) |
※ Rohrer & Taylor (2007) の算数のRCTより。交互練習群は1週間後に3倍の正答率。
練習中に「難しい」「混乱する」と感じるのは、脳が深く処理している証拠です。これを**「望ましい難しさ(desirable difficulty)」**と呼びます。
ではどうすればいいか
ブロック学習が「悪い」のではなく、ブロック学習だけに頼ることが問題です。
- 新しいことを学ぶ段階 → ブロック学習(同じタイプを繰り返し)で基本を身につける
- 定着させる段階 → 交互練習(前の単元と混ぜる)で判断力と長期記憶を鍛える
具体的には:
- 算数の宿題で、今週の問題に先週の問題を2〜3問混ぜる
- 漢字テストで「今週の漢字」+「前に習った漢字」を出す
- 小テストを単元完結にせず、過去の内容も含む累積型にする
注意したいこと
- 子どもは「混ぜると難しくなった = 自分ができなくなった」と感じやすい。「難しいのは良いことだよ」と理由を説明することが大切
- 保護者から「ドリルの点数が下がった」と指摘されることがある。練習中の正答率は学力の指標ではないことを共有する
- 日本の教科書・ドリルのほとんどがブロック形式なので、教師が意識的に混ぜる工夫が必要
主な参考研究
- Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35(6), 481–498. — 交互練習の効果を算数で実証したRCT。1週間後のテストで3倍の差。
- Rohrer, D. (2012). Interleaving helps students distinguish among similar concepts. Educational Psychology Review, 24, 355–367. — 交互練習が「概念の区別力」を育てることを理論的に説明。
- Bjork, R. A. (1994). Memory and metamemory considerations in the training of human beings. In Metacognition: Knowing about knowing. — 「望ましい難しさ(desirable difficulty)」概念の原典。
- Dunlosky, J., et al. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. — 10の学習法を評価。ブロック練習は「低い有用性」、交互練習は「中〜高い有用性」。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 算数編 — 既習事項の活用・統合が目標として示されており、交互練習の考え方と接続します。
関連項目: 交互練習(インターリービング) — 交互練習の効果と具体的な実践方法を詳しく解説