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Strategy — 最終更新 2026-06-17

Hattie

指導法

学校でのスマートフォン制限

学校でのスマホ使用を制限・禁止する措置。UNESCO(2023)が禁止を推奨。効果は学力より社会面(いじめ等)に現れやすく、研究は中学・高校中心。イングランドの研究では学力下位層で効果が大きいとの報告もある。

学習効果
+2ヶ月
3月時点で、通常より約2ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★☆☆☆
コスト
¥····
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

Hattie (Visible Learning) d = 0.16

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Beland & Murphy(2016)のイングランド 4 都市の研究では、携帯電話禁止措置の導入後に中等教育修了時の試験(GCSE)の成績が平均 6.41% SD 改善し、特に学力下位層の子どもで効果が大きい(下位 1/4 の層で 14.23% SD、上位層では効果なし)。ただしこの正の効果には再現性の問題があり、Kessel et al.(2020)のスウェーデンの中等学校の研究では効果が確認されず(d=0.01、有意差なし)、Abrahamsson(2024)のノルウェーの研究では正の効果が報告されるなど、国によって結果が割れている。Böttger & Zierer(2024)が 5 研究を統合したメタ分析では、学力への効果は小さく有意でない(d=0.05)一方、社会的ウェルビーイング(いじめ等)への効果は有意(d=0.22)だった。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
5 件
総サンプルサイズ
携帯電話・スマートフォン禁止の効果を扱った 5 研究(7 効果)を統合。最大の研究はノルウェーの約 151,925 観測(Abrahamsson)・イングランドの約 130,482 観測(Beland & Murphy)。いずれも中等教育(中学・高校)段階が中心
効果量
メタ分析の全体効果は d = 0.162(p < 0.05)だが、これは学力と社会的ウェルビーイングを合わせた値。**学力(performance)に限ると d = 0.05(95%CI [−0.04, 0.14]、有意でない)**、社会的ウェルビーイング(いじめ等)では d = 0.22(95%CI [0.11, 0.32]、p < 0.001)で、効果は主に社会面に現れる。個別研究ではイングランドの Beland & Murphy(2016)が試験成績 +6.41% SD(学力下位 1/4 層で +14.23% SD)を報告する一方、スウェーデンの Kessel et al.(2020)は有意な効果を見いだしていない(d = 0.01)
エビデンスの限界

主力となる研究はいずれも中等教育(中学・高校)が対象で、小学生を直接扱った禁止研究はほとんどない。新しい Figlio & Özek(2025、米フロリダ州の州全体の禁止)では 2 年目に試験成績の改善が見られたが、効果はスマートフォン所持率が高い中学・高校で顕著で、小学校では有意な効果が確認されなかった。学力への効果は国によって再現性が割れる(イングランド=正、スウェーデン Kessel=効果なし、ノルウェー Abrahamsson=正)。日本の小学校への直接適用は限定的で、個人のスマートフォン制限は GIGA スクール端末の管理ルールとは別問題として扱う必要がある

日本の文脈で考慮したいこと

日本の公立小中学校は従来スマートフォン持ち込みを原則禁止してきたが、災害時の連絡手段として持ち込みを認める動き(2020 年文部科学省通知等)がある。一方、GIGA スクール端末(Chromebook/iPad)は授業で使用される — この2つを区別する必要がある。個人スマホの制限 ≠ 学校 ICT の制限。中学校で持ち込みを認める自治体も増えているが、使用場面のルール設計が鍵。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(6)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本の小学校との関連
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究

一言でいうと

学校内でのスマートフォンの使用を制限または禁止する措置です。UNESCO は2023年の報告書で、教室でのスマホ使用禁止を推奨しました。フランス・ノルウェー・オランダなど多数の国が法制化を進めています。

なぜ効果があるのか

スマートフォンは強力な注意散漫の原因です。通知、SNS、ゲームは子どもの注意を授業から奪います。制限することで:

  • 授業への集中時間が増える
  • 子ども同士の対面のコミュニケーションが増える
  • 休み時間の身体活動が増える
  • いじめ(サイバーいじめ)のリスクが減る

日本の小学校との関連

日本の小学校ではスマートフォンの持ち込みは原則禁止の学校が多いですが、以下の観点で重要です。

  • GIGAスクール端末の管理 — 1人1台端末は学習用だが、授業外での使い方が課題になっている
  • 休み時間の端末利用 — 学習と関係ない動画視聴やゲームへの対策
  • 家庭でのスクリーンタイム — 保護者への情報提供として、エビデンスを共有する意味がある
  • 中学進学を見据えた指導 — スマホとの付き合い方を小学校段階から考える機会

研究からわかっていること

  • UNESCO(2023)の報告は、複数国のメタ分析を引きながら、スマホの学習用途以外での使用が学力に負の関連をもつことを指摘している
  • 2025年のフロリダ州の研究(NBER)では、スマホ禁止の2年目に試験成績が改善したが、効果はスマホ所持率の高い中学・高校で顕著で、小学校では有意な効果は確認されなかった
  • ただし国による再現性の差は大きく(イングランド=正の効果、スウェーデン=効果なし、ノルウェー=正の効果)、効果は学力より社会面(いじめ等)に現れやすい
  • ただし「禁止」だけでなく「適切な使い方を教える」アプローチも研究されている

注意したいこと

  • 日本の小学校ではスマホ持ち込み自体が少ないため、GIGAスクール端末の管理ルールに読み替える方が実践的
  • 「禁止」だけでは子どもはデジタルリテラシーを学べない。使い方の教育とセットにする
  • エビデンスの蓄積はまだ初期段階。研究の数が限られている(★★)
  • 家庭のスクリーンタイム管理は学校の範囲を超えるが、情報提供は可能

主な参考研究

参考にしている情報源
UNESCO Global Education Monitoring Report 2023 — Technology in education