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Strategy — 最終確認 2026-09-08

日本研究 Hattie

指導法

スクリーンタイムの影響

画面使用と学力・睡眠・メンタルヘルス・近視の関連が調べられているが、関連の向きと強さは用途と領域で異なる。一律の時間制限を支持する根拠は乏しい。

学習効果
-2ヶ月
3月時点で、通常より約2ヶ月分学力が低下する傾向
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥····
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

日本研究 ★★★ ☆☆ 川島隆太(東北大学)

川島隆太(2016-2018)の東北大学チームが仙台市の学習状況調査で、スマートフォン使用時間と学力の負の相関を報告(ただし横断調査のため因果は未確定)。

Hattie (Visible Learning) d = -0.18

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Hattie の Television 項目で負の効果。Madigan et al.(2019)の縦断研究で、2-5 歳児のスクリーンタイムが発達スクリーニングテストの成績と負の関連。Oswald et al.(2020)のスコーピングレビューは、総スクリーンタイムが長いほど学業成績が低いという横断研究中心の報告を集約しているが、時間の閾値は示していない(Oswald らが引く『1 日 2 時間以内』は既存ガイドラインの数値であり、レビュー自身の知見ではない)。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
58 件
総サンプルサイズ
系統的レビュー 58 横断研究・480,479 人(4〜18 歳)、うちメタ分析は 30 研究・106,653 人
効果量
総スクリーン時間は学業成績と非関連(ES = −0.29、95% CI −0.65〜0.08)。用途別ではテレビ視聴が総合 −0.19・言語 −0.18・数学 −0.25、ゲームが総合 −0.15 の負の関連。子どもより青年期で関連が強い
主要エビデンスレビュー
Adelantado-Renau, Moliner-Urdiales, Cavero-Redondo, Beltran-Valls, Martínez-Vizcaíno & Álvarez-Bueno (2019). Association Between Screen Media Use and Academic Performance Among Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-analysis
エビデンスの限界

全研究が横断デザインで因果関係は示せない(学業不振がスクリーン利用を増やす逆方向の可能性も残る)。関連は用途別に分かれ、総スクリーン時間との関連は確認されていないため、一律の時間制限を直接支持するエビデンスではない。メタ分析に含まれたのは 58 研究中 30 研究にとどまる。

日本の文脈で考慮したいこと

GIGA スクール構想で 1 人 1 台端末が配布された日本では、『学習用の画面時間』と『娯楽の画面時間』を区別する必要がある。学校用途の目的的な使用は学習効果(digital-technology +3)を持つ一方、家庭での無目的な長時間使用には負の関連が報告されている。ただし本サイトの -2 ヶ月は、総スクリーンタイムではなく テレビ視聴の効果量(Hattie の d = -0.18、Adelantado-Renau のテレビ視聴 -0.19)に基づく代表値であり、総スクリーンタイムと学力の関連は確認されていない。両者を同じ『スクリーンタイム』として論じると混乱する。川島隆太のデータは日本の子どもを対象とした数少ない知見だが、交絡変数の統制は限定的。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(8)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ負の影響があるのか
  3. 日本の小学校で知っておくべきこと
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 日本の研究・公式資料
  8. 海外の研究

一言でいうと

テレビ・スマホ・タブレット・ゲーム等の画面を見る時間(スクリーンタイム)と、学力・睡眠・メンタルヘルス・近視の関連が調べられています。ただし関連の向きと強さは領域ごとに違い、「長いほど悪い」と一括りにはできません。GIGAスクール環境で端末が日常化した今こそ、どこまで言えるかを分けて見る必要があります。

なぜ負の影響があるのか

  • スクリーンタイムが増えると、読書・運動・睡眠・対面の対話に使える時間が減る(置換効果)
  • 就寝前の画面使用はブルーライトと覚醒刺激により入眠を遅らせ、睡眠時間を削る
  • SNSやゲームの即時報酬に慣れると、教室での学習への集中力が下がる
  • 受動的な視聴(動画を見るだけ)は能動的な学習(読む・書く・話す)と質が異なる

日本の小学校で知っておくべきこと

  • 「1日2時間」という目安がよく引かれるが、支えている研究は領域によって違う。うつ症状については2時間を超えるとリスクが上がる用量反応メタ分析がある一方、同じ分析では0時間より1時間の方がリスクが低い。学力について2時間という閾値を支持するメタ分析は確認できていない
  • 米国小児科学会は2016年に、学齢期へ一律の時間制限を当てはめる方針を取りやめている。就寝1時間前は画面を避ける、という推奨は残っている(「1時間で睡眠の質が下がる」と研究が示したわけではなく、推奨として置かれている)
  • 保護者に伝えるなら、時間の閾値より行動で伝える方が裏づけを示しやすい。就寝前に画面を避けること(米国小児科学会の推奨)と、屋外で過ごす時間を確保すること(近視との関連が国内調査で見られている)の2つ
  • GIGAスクール端末は「学習用」だが、家庭での使い方まではコントロールしにくい
  • 保護者向けに「スクリーンタイムの目安」をエビデンス付きで伝える機会を持つ
  • 授業でのICT活用(+3ヶ月)と、無目的な画面使用(-2ヶ月)は全く別物であることを教員自身が区別する。この -2 はテレビ視聴の効果量に基づく代表値で、総スクリーンタイムの値ではない
  • 「端末を使う=学習」ではない。何をしているかが重要

研究からわかっていること

  • Hattieのメタ分析ではテレビ視聴の効果量d=-0.18(負)
  • 学力との関連を調べたメタ分析(Adelantado-Renau et al. 2019)では、総スクリーンタイムと学力の関連は確認されなかった(効果量 -0.29、95% 信頼区間 -0.65〜0.08)。負の関連が出たのは用途別で、テレビ視聴(-0.19)とゲーム(-0.15)
  • 睡眠については、系統的レビュー(Hale & Guan 2015)が90%の研究で不利な関連を報告している。主なものは睡眠時間の短縮と就寝時刻の遅れで、著者らは因果関係は確認されていないとしている
  • メンタルヘルスとの関連はU字型で、1日1時間前後でうつリスクが最も低く、2時間で0時間と同等、4時間で1.46倍まで上がる(Liu et al. 2016。オッズ比=かかりやすさの比で、1 なら差なし。1時間 0.88 / 2時間 0.99 / 4時間 1.46)
  • 近視については、スマート機器の使用との関連を報告するメタ分析(Foreman et al. 2021、オッズ比 1.26、95% 信頼区間 1.00〜1.60。著者らは「関連する可能性がある」と限定している)がある一方、文部科学省の令和4年度調査ではテレビ視聴時間が長い小学生ほど近視の有病割合が低く、機器によって向きが割れている。同調査では、屋外活動が長いほど近視が少ない関連と、学校以外の勉強・読書時間が長いほど近視が多い関連の双方に明確な傾向が見られた(この分析は学年で調整しただけで、他の要因は調整していない)
  • WHO(2019)は1歳未満と1歳児には座位のスクリーンタイムを推奨せず、2〜4歳では1日1時間以内を推奨している(いずれも5歳未満が対象)。5〜17歳を含むWHO(2020)は「娯楽目的の画面時間を減らす」とだけ述べ、時間の数値を示していない
  • 教育目的での適切な使用と、受動的な娯楽使用を分けて考える必要がある

注意したいこと

  • 「画面=悪」という単純な結論ではありません。問題は「長時間の無目的な使用」です
  • GIGAスクール端末の教育的利用まで制限するのは本末転倒で、目的のある使用は効果的です
  • 家庭のスクリーンタイムは学校だけでは管理できないので、保護者との連携が欠かせません
  • 子ども自身が「自分の画面時間を意識する」メタ認知を育てることが長期的な対策になります

主な参考研究

日本の研究・公式資料

  • 令和4年度 児童生徒の近視実態調査 調査結果報告書. 文部科学省 (2024). — 小中学生の近視有病割合と生活習慣の関連。テレビ視聴時間が長い小学生ほど近視が少なく、休日のPC・タブレット使用が長いほど多いなど、機器によって向きが分かれる。最も一貫していたのは屋外活動との関連。

海外の研究

参考にしている情報源
Madigan, Browne, Racine, Mori & Tough (2019) Association Between Screen Time and Children's Performance on a Developmental Screening Test
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