← 指導法一覧へ戻る

Strategy — 最終確認 2026-09-06

EEF

指導法

学校制服

制服の着用が学力に与える影響。EEF はエビデンスが極めて乏しいとして、学力効果の月数を公表していない。制服それ自体が行動や出席率を改善するという確かなエビデンスも、ほとんど示されていない。

学習効果
測定なし
学力への効果を月数で示せる研究がない
エビデンス
★★☆☆☆
コスト
¥····
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit

EEF は学力への効果について月数を公表していない。確実性評価が 5 段階中 0 で、採択基準を満たす研究が 8 件しかないため(EEF はこのストランドのエビデンスを『extremely limited』と表現している)。EEF は『制服の導入が、それ自体で学力・行動・出席率を改善するという確かなエビデンスはほとんどない』と述べる一方、制服の導入は学校改善策と同時に行われることが多く、制服単独の効果を測ること自体が難しいとも指摘している。これは効果が無いという証拠ではなく、確かなエビデンスが無いということ。2021 年 7 月時点の採択研究は 7 件だった。なお単一研究の Brunsma & Rockquemore(1998) は学力への負の相関を報告したが、Bodine(2003) が『同じデータはむしろ全体・大半の学校種別で正の相関を示し、負の結論は分析手法の誤用による』と批判し、著者が反論(2003)するなど解釈は定まっていない。『制服で学校文化を作れば学力が上がる』という考えを単独で裏づけるエビデンスは無い。ただし EEF は、制服は学校文化づくりや行動・規律の改善を含む広い学校改善の取り組みの一部として組み込むことはできる、としている。

Technical Appendix 研究の詳細
総サンプルサイズ
EEF Teaching and Learning Toolkit が採択した研究は 8 件(2025年10月レビュー)。以下は本サイトが代表的実証研究として参照した Gentile & Imberman (2012)(米南西部の大規模都市学区の生徒レベルのパネルデータ。学校が独立に制服を導入したかどうかの差を使い、学校・生徒の固定効果と学校別の線形時間トレンドを統制)
効果量
制服の採否は学校の自己選択(低学力・規律課題を抱える学校ほど導入しやすい等)や同時に行われる改善策と交絡しており、学力への因果効果の頑健な推定は困難。EEF は学力への効果のエビデンスを『極めて限定的(extremely limited)』と評価し、平均効果量(月数)を提示していない
主要エビデンスレビュー
エビデンスの限界

制服の『学力への因果効果』を統合効果量(pooled effect size)で示した質の高いメタ分析は実質的に存在しない。EEF Toolkit は採択基準を満たす研究が8本しかなく、確実性評価が 5 段階中 0 で、月数の効果量自体を表示していない。比較的厳密な Gentile & Imberman (2012) でも、前向きな結果は中学・高校(とくに女子)の出席率と一部の言語スコアに偏在し、小学生(1〜5年)の学力への効果は弱く分析手法に敏感(主要モデルで小学生女子の言語が約0.05標準偏差だが10%水準のみで有意、校長の固定効果を加えると非有意。OLSの水準モデルでは小学生に負の相関も出る)。制服の導入は規律強化策など他の学校改善策と同時に行われることが多く、自己選択の交絡から制服単独の効果を分離するのは困難。さらに日本の小学校は私服または簡易制服が多く、欧米の『制服の有無』論争とは文脈が異なる。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の小学校の多くは私服制または指定服(簡易制服)で、欧米の『制服の有無』論争とはやや文脈が異なる。ただし、『制服があれば落ち着く』『帰属意識が高まる』といった言説は日本でも聞かれる。経済的負担・選択の自由・ジェンダー表現といった観点と合わせて議論すべき領域で、学力向上の手段として制服を正当化できる根拠は見つかっていない。EEF は、制服を導入・変更する際に、費用を負担しにくい家庭への手当てを考えるよう促している。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(6)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ確かなことが言えないのか
  3. 日本の小学校との関連
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究

一言でいうと

制服を導入・統一することで学力が向上するかどうかを検証した研究です。EEFエビデンスが極めて乏しいとして、学力への効果の月数を公表していません。効果が無いという意味ではなく、確かなエビデンスが無いという意味です。帰属意識や規律の改善が期待されることがありますが、制服それ自体がそれらをもたらすという確かな研究は、ほとんど見つかっていません。

なぜ確かなことが言えないのか

制服の導入は、規律の徹底や学校文化づくりといった他の改善策と同時に行われることが多く、制服だけの効果を切り出して測ること自体が難しいと EEF は指摘しています。導入する学校の側にも偏りがあり(学力や規律に課題を抱える学校ほど導入しやすいなど)、比較の対象を揃えるのが困難です。採択基準を満たした研究は 8 件にとどまります。

日本の小学校との関連

日本の小学校では制服のない学校も多く、導入の是非が議論されることがあります。

  • 制服の導入は学力向上の根拠にはならない
  • 「制服があれば服装の格差が見えなくなる」という議論はあるが、研究は家庭の経済格差が制服の有無と関係なく学力に影響することを示している(松岡, 2019)
  • 制服に費用をかけるなら、エビデンスの強い指導法への投資の方が費用対効果が高い
  • 制服の意義を否定するものではないが、学力向上策として位置づけるのは妥当でない

研究からわかっていること

  • EEF は学力への効果の月数を公表していません。確実性評価は 5 段階中 0(extremely low)で、採択基準を満たす研究は 8 件です
  • 本サイトはこのページの効果量を「測定なし」(学力効果を月数で示せる研究が無い)、エビデンスの強さを★2 として独自に評価しています。効果が無いと確かめられたのではなく、確かなエビデンスが無いという意味です。EEF 自身の確実性評価は 5 段階中 0 です
  • EEF は「制服の導入が、それ自体で学力・行動・出席率を改善するという確かなエビデンスはほとんどない」と述べています
  • 英国では「制服が行動を改善する」と広く信じられていますが、EEF は、行動の改善それ自体が学びの向上につながるとは限らない、ただし重要な前提条件にはなりうる、と注記しています
  • 制服単体で学力が上がるとは考えにくいものの、学校文化づくりや行動・規律の改善を含む広い学校改善の取り組みに組み込むことはできる、と EEF は述べています
  • 比較的厳密な Gentile & Imberman (2012) では、前向きな結果は中学・高校(とくに女子)の出席率と一部の言語スコアに偏り、小学生の学力への効果は弱く分析手法に左右されました
  • Brunsma & Rockquemore (1998)(縦断調査データの二次分析・単一研究)は、出席・行動・物質使用には効果がなく、学力にはむしろ負の相関があると報告した。ただしこの解釈は Bodine (2003) に『同じデータはむしろ正の相関を示す/分析手法の誤用』と批判され、著者が反論(2003)するなど論争がある

注意したいこと

  • 「確かなエビデンスが無い」は「制服に意味がない」と同義ではない。衣服の選択に伴うストレスの軽減など、学力以外の価値はあり得る
  • ただし「学力を上げるために制服を導入する」という判断を支えるエビデンスは、現時点では見つかっていない
  • EEF は、制服の方針を維持するには教職員が一貫して運用し続けることが欠かせないとしています。導入すれば自動的に何かが変わる類のものではありません
  • 制服の費用が家庭の負担になるケースもあり、格差の観点からは逆効果になる可能性も

主な参考研究

  • Brunsma, D. L., & Rockquemore, K. A. (1998). Effects of student uniforms on attendance, behavior problems, substance use, and academic achievement. Journal of Educational Research, 92(1), 53–62. — 縦断調査データの二次分析(単一研究)。出席・行動・物質使用に効果なし、学力には負の相関を報告。ただし解釈には後続の論争がある。
  • Bodine, A. (2003). School uniforms, academic achievement, and uses of research. Journal of Educational Research, 97(2). — Brunsma & Rockquemore (1998) の負の相関の主張に対し、同じデータは全体・大半の学校種別でむしろ正の相関を示しており、負の結論は学校種別分析の誤用によると批判(著者は2003年に反論)。
  • School uniform. Education Endowment Foundation, Teaching and Learning Toolkit. — 2025年10月のレビュー(8研究)。確実性評価は 5 段階中 0(extremely low)で、学力への効果の月数を公表していない。制服が単独で学力・行動・出席率を改善するという確かなエビデンスはほとんどないとしている。
  • 松岡亮二 (2019). 『教育格差――階層・地域・学歴』筑摩書房. — 日本における教育格差はSESに起因し、外見の統一では解消されないことを実証。
参考にしている情報源
EEF Teaching and Learning Toolkit — School uniform