一言でいうと
制服を導入・統一することで学力が向上するかどうかを検証した研究です。結論として、学力への明確な効果は確認されていません。帰属意識や規律の改善が期待されることがありますが、それも研究では一貫した結果が出ていません。
なぜ効果がないのか
制服は子どもの外見を統一しますが、学習そのものには何も変化をもたらしません。「制服を着れば気が引き締まる」「経済格差が見えなくなる」といった期待は直感的ですが、研究で確認されていません。学力を左右するのは、教室の中で何が起きているか(指導の質、フィードバック、対話など)であり、何を着ているかではありません。
日本の小学校との関連
日本の小学校では制服のない学校も多く、導入の是非が議論されることがあります。
- 制服の導入は学力向上の根拠にはならない
- 「制服があれば服装の格差が見えなくなる」という議論はあるが、研究は家庭の経済格差が制服の有無と関係なく学力に影響することを示している(松岡, 2019)
- 制服に費用をかけるなら、エビデンスの強い指導法への投資の方が費用対効果が高い
- 制服の意義を否定するものではないが、学力向上策として位置づけるのは妥当でない
研究からわかっていること
- EEF Toolkitでは効果量±0ヶ月。学力への効果は確認されていない
- 帰属意識・出席率への効果を示す研究もあるが、質が高い研究では一貫した結果が出ていない
- Brunsma & Rockquemore (1998)(縦断調査データの二次分析・単一研究)は、出席・行動・物質使用には効果がなく、学力にはむしろ負の相関があると報告した。ただしこの解釈は Bodine (2003) に『同じデータはむしろ正の相関を示す/分析手法の誤用』と批判され、著者が反論(2003)するなど論争がある
注意したいこと
- 「効果がない」は「制服に意味がない」と同義ではない。衣服の選択に伴うストレスの軽減など、学力以外の価値はあり得る
- ただし「学力を上げるために制服を導入する」という判断は、エビデンスに基づいていない
- 制服の費用が家庭の負担になるケースもあり、格差の観点からは逆効果になる可能性も
主な参考研究
- Brunsma, D. L., & Rockquemore, K. A. (1998). Effects of student uniforms on attendance, behavior problems, substance use, and academic achievement. Journal of Educational Research, 92(1), 53–62. — 縦断調査データの二次分析(単一研究)。出席・行動・物質使用に効果なし、学力には負の相関を報告。ただし解釈には後続の論争がある。
- Bodine, A. (2003). School uniforms, academic achievement, and uses of research. Journal of Educational Research, 97(2). — Brunsma & Rockquemore (1998) の負の相関の主張に対し、同じデータは全体・大半の学校種別でむしろ正の相関を示しており、負の結論は学校種別分析の誤用によると批判(著者は2003年に反論)。
- EEF (2021). School uniform: Evidence review. — 効果量±0ヶ月。帰属意識への効果も限定的。
- 松岡亮二 (2019). 『教育格差――階層・地域・学歴』筑摩書房. — 日本における教育格差はSESに起因し、外見の統一では解消されないことを実証。