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Strategy — 最終更新 2026-04-18

EEF

指導法

留年(原級留置)

学力が基準に達しない子をもう1年同じ学年に留める措置。研究ではほぼ一貫して負の効果が報告されている。日本では制度上ほぼ行われない。

学習効果
-4ヶ月
3月時点で、通常より約4ヶ月分学力が低下する傾向
エビデンス
★★★★☆
コスト
¥¥¥¥¥
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit -4 ヶ月 ★★★★ ☆

EEF Toolkit で -4ヶ月・エビデンス★4(高)。留年は学力・自己肯定感・中退リスクすべてに負の効果。Jimerson(2001)・Allen et al.(2009)のメタ分析でも一貫して負の効果。コスト(+5)は追加年度の教育費用を反映。『追加支援付きの進級』が唯一効果的な代替案。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
22 件
総サンプルサイズ
207 効果量 / 22 研究(1990〜2007、主に米国)
効果量
研究設計の質に依存。低質な研究は大きな負の効果、高質な研究では効果はゼロ近くまで小さくなる
エビデンスの限界

留年効果は研究設計で大きく変動。Jimerson(2001)・Hattie は一貫して負の効果を報告する一方、Allen 2009 の高質研究ではゼロ近く。EEF の −4ヶ月は複数メタ分析を統合した値で、保守的な推定。米国型の強制的留年と、追加支援付き進級(代替案)との比較が重要。日本では制度上ほぼ行われず、参照知識としての意義が中心。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の小学校では制度上ほぼ留年は行われない(病気・長期欠席での特例を除く)ため、この項目は日本では『参照しない選択肢』として意味を持つ。一方、国際比較(OECDの国際学力調査(15歳対象・3年ごと)">PISA)では留年率の高い国(フランス・ドイツ等)で学力格差が大きい傾向があり、留年制度そのものが格差拡大要因となる可能性が示唆される。日本の自動進級制度は、EEFエビデンスと整合する設計と言える。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(6)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果がないのか(むしろ逆効果なのか)
  3. 日本の小学校との関連
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究

一言でいうと

学力が基準に達しない子どもを、進級させずにもう1年同じ学年に留める措置です。日本の小学校では制度上ほとんど行われませんが、海外では広く議論されています。研究ではほぼ一貫して負の効果が報告されており、「効果がない指導法」の代表例です。

なぜ効果がないのか(むしろ逆効果なのか)

直感的には「もう1年やれば追いつける」と思えますが、研究はそれを否定しています。

  • 留年した子は自己肯定感が大きく低下し、学習意欲を失う傾向がある
  • 同じ内容をもう1年繰り返すだけでは、つまずきの根本原因が解消されない
  • 留年しなかった同程度の学力の子と比較すると、留年した子の方が長期的に学力が低くなる
  • 社会的な関係(友人関係)の断絶が、情緒面にも悪影響を与える

日本の小学校との関連

日本では原級留置(留年)はほぼ行われません。しかし、この知見は以下の場面で参考になります。

  • 「この子は◯年生の内容が身についていない」と感じた時、留め置くのではなく、次の学年で補充する方が効果的です
  • 不登校の子が復帰する際、「1学年戻す」よりも「現学年で個別に支援する」方が研究の示す方向
  • 海外の教育事情を理解する際の基礎知識として

研究からわかっていること

  • メタ分析では、留年の効果は**-4ヶ月**(学力が後退する方向)と報告されています
  • この負の効果は、短期的には見えにくく、長期的(数年後)に顕著になります
  • エビデンスの強度は高く(★★★★)、多くの質の高い研究で一貫して確認されています
  • 留年の代わりに個別指導や少人数指導を実施した方が、学力・自己肯定感ともに良い結果を示します

注意したいこと

  • この結果は「学力が低い子を放置してよい」という意味ではありません。留年以外の支援(個別指導・少人数指導・家庭との連携)が必要です
  • 日本の制度では留年はほぼないため、直接の政策的含意は限定的です
  • ただし「同じことを繰り返せば身につく」という前提への重要な反証として知っておくべき知見です

主な参考研究

  • Jimerson, S. R. (2001). Meta-analysis of grade retention research. Journal of Educational Psychology, 93(2), 274–286. — 20研究のメタ分析。留年は学力・社会性・自己肯定感のいずれにも負の効果。
  • Allen, C. S., Chen, Q., Willson, V. L., & Hughes, J. N. (2009). Quality of research design moderates effects of grade retention. Educational Researcher, 38(6), 403–412. — 研究の質が高いほど、留年の負の効果が大きく出ることを示した。
  • EEF (2021). Repeating a year: Evidence review. — 効果量-4ヶ月。エビデンスの強度★★★★。代替的な支援策を推奨。
参考にしている情報源
EEF Teaching and Learning Toolkit — Repeating a year