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Strategy — 最終更新 2026-04-26

EEF Hattie

指導法

成長マインドセット

「能力は努力で伸びる」という信念を育てる介入。効果は小さいがコストも低い。過大な期待は禁物。

学習効果
+1ヶ月
3月時点で、通常より約1ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥····
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit

EEF Toolkit に独立エントリは無いが、EEF はオンライン介入の大規模 RCT(Changing Mindsets 2015-19)で効果を確認できず、慎重な評価を示している。

Hattie (Visible Learning) d = 0.10

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Sisk et al.(2018)の 129 研究メタ分析で、成長マインドセットと学力の関連は r=0.10(d≒0.19)と非常に小さい。Burnette et al.(2023)の追試メタでも類似。Yeager et al.(2019)の米国全国 RCT では全体効果は d=0.03 と微小で、低学力層にのみ d=0.1 程度の効果。さらに **Macnamara & Burgoyne(2023)の 63 研究メタ分析(*Psychological Bulletin*)では全体効果が d̄=0.05、出版バイアス補正後は非有意** と報告され、94% の研究に交絡があり、財務的インセンティブのある著者は 2.5 倍の確率で正の効果を報告していた。『信念を変えれば学力が上がる』という素朴な解釈は支持されない。

日本の文脈で考慮したいこと

『やればできる』の言説は日本で馴染み深く、道徳・特別活動でも広く使われているが、『信念を変えれば学力が上がる』という過大な期待はエビデンスに反する。中室牧子(2015)も成長マインドセットの効果は限定的と述べている。『努力を具体的にどう行うか』『つまずいたときの戦略』といった 具体的な学習戦略(メタ認知検索練習等)と組み合わせない限り、信念操作単独の効果はほぼ無い。旧フロントマター +2 は Hattie の上限値由来で過大。Sisk 2018 等の独立メタ分析に基づき +1 に引き下げ。さらに Macnamara & Burgoyne (2023) は出版バイアス・著者の利益相反・研究設計の問題を調整した結果、効果はほぼゼロ(d̄=0.05、補正後非有意)と報告しており、現時点での研究コンセンサスは「効果は確認されていてもごく小さく、方法論的問題が大きい」方向にさらに傾いている。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(10)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 海外の研究(効果量の根拠)
  8. 日本の研究・公式資料
  9. 注記
  10. 関連する学習指導要領

一言でいうと

「自分の能力は生まれつき決まっている(固定マインドセット)」ではなく「努力や戦略次第で伸ばせる(成長マインドセット)」と子どもが信じられるように働きかける指導です。心理学者キャロル・ドゥエックの研究が出発点です。

なぜ効果があるのか

「自分はできない」と信じている子は、難しい課題を避け、失敗を恐れ、努力を「無駄」と感じやすくなります。一方、能力が伸びると信じている子は、困難を学びの機会と捉え、粘り強く取り組む傾向があります。マインドセット介入は、この信念を変えることで、学習行動を変え、結果として学力にも影響を与えるとされます。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 「頭がいいね」ではなく「工夫したね」「粘り強くやったね」と、プロセスを認める声かけをする
  • 間違いを「恥ずかしいこと」ではなく「学びのチャンス」として扱う学級文化を作る
  • 脳は使うほど成長する、という科学的な事実を年齢に合わせた言葉で伝える
  • 「まだ」という言葉を活用する(「できない」→「まだできない」)
  • 教師自身が失敗を見せ、そこから学ぶ姿をモデリングする

研究からわかっていること

  • Sisk et al.(2018)のメタ分析では、成長マインドセットと学力の関連はr=0.10(約1ヶ月分)と非常に小さいと報告されています
  • Macnamara & Burgoyne(2023)の最新メタ分析(63 研究)では、全体効果は d̄=0.05 とさらに小さく、出版バイアスを補正すると統計的に非有意 になります。94% の研究に交絡があり、財務的インセンティブのある著者は 2.5 倍の確率で正の効果を報告していたとも報告されており、研究設計の質に深刻な問題があると指摘されています
  • 小学校段階での研究は数が限られており、大規模な追試は今後の課題です
  • 効果は、学力が低い層や社会経済的に不利な層で比較的大きいことが示唆されています
  • マインドセットの変化が、必ずしも行動の変化につながるとは限らないことも指摘されています

注意したいこと

  • 「マインドセットを変えれば学力が劇的に上がる」というのは過大な期待です。効果は小さめです
  • 「努力すればできる」と伝えるだけでは不十分で、具体的な学習戦略とセットで伝える必要があります
  • 構造的な不平等を「マインドセットの問題」にすり替えるリスクに注意が必要です
  • コストが低い(声かけの変化だけで始められる)ため、費用対効果は悪くありません

主な参考研究

海外の研究(効果量の根拠)

日本の研究・公式資料

(該当なし — 日本国内での成長マインドセット介入の効果を検証した研究は現時点で確認されていません)

注記

効果量(+2ヶ月)は国際的なメタ分析(Sisk et al., 2018)およびRCT(Yeager et al., 2019)に基づいています。すべての参考研究が海外(主に米国)のものであり、日本の学校文化における効果を検証したRCTは存在しません。

関連する学習指導要領

  • 小学校学習指導要領解説 総則編 — 「学びに向かう力、人間性等」の涵養として、粘り強く学習に取り組む態度の育成が求められています。成長マインドセットの考え方と接続する内容です。
参考にしている情報源
Sisk, Burgoyne, Sun, Butler & Macnamara (2018) To What Extent and Under Which Circumstances Are Growth Mind-Sets Important to Academic Achievement?
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