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Strategy — 最終更新 2026-04-14

日本研究

指導法

学習塾と公教育の関係

学習塾通いは中程度の正効果(d = 0.42-0.67)が国際的なメタ分析で報告されている一方、家庭の経済状況による格差を生む構造でもある。

学習効果
+3ヶ月
3月時点で、通常より約3ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥¥¥¥¥
対象
全教科
中学年 · 高学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

日本研究 + 3 ヶ月 ★★★ ☆☆ 中室牧子(慶應義塾大学)、松岡亮二(早稲田大学)

松岡亮二(2019)・中室牧子(2015)らは日本の学習塾通いと学力・進学の関連を分析し、通塾は学力向上に寄与する一方、SES により通塾率に大きな差があり、公教育では縮まらない格差を学習塾が拡大している と指摘。国際的には Byun, Chung & Baker(2018)のメタ分析で shadow education の効果量が d=0.42-0.67 と報告。

日本の文脈で考慮したいこと

『学習塾は公教育の補完ではなく学力格差の主要因の一つ』 という日本特有の論点。OECD 国で見ても日本・韓国・台湾等の東アジア諸国は shadow education の比率が突出して高い。公教育の教員が知っておくべきは、学級内の学力差の背後に通塾の有無がある可能性と、その差が SES に強く規定されていること。『家で勉強しないから学力が低い』という解釈は、構造を見誤らせる。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(9)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果が複雑なのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 海外の研究
  8. 日本の研究・公式資料
  9. 注記

一言でいうと

日本の小学校高学年では、約半数の児童が学習塾に通っています(文部科学省「子供の学習費調査」)。学習塾通いは、平均的には学力向上と関連していますが、その効果は通塾頻度・塾の質・子どもの年齢によって大きく異なり、また通塾できるかどうかは家庭の経済状況に強く依存します。

なぜ効果が複雑なのか

学習塾の効果を測ることは方法論的に難しい問題です。「塾に通う子は、もともと学習意欲が高い・家庭が学習に関心が高い」という選択効果があり、単純に「塾あり vs なし」で比較すると塾の効果が過大評価されます。中室牧子氏らの研究は、こうした選択バイアスを統計的に補正した上で、塾通いの効果は確かに正だが想定より小さいと報告しています。

日本の小学校で取り入れるヒント

学校としてできること:

  • 「塾に通っている子」と「通っていない子」の間の知識ギャップを意識する
  • 授業の中で基礎の復習機会を確保し、塾依存を前提にしない
  • 宿題を塾の課題と競合させない設計にする
  • 補習・放課後学習を充実させ、塾に通えない子の学習機会を保障する
  • 保護者への情報提供で「塾が必須」という空気を強化しない

研究からわかっていること

  • 塾通いと学力には平均的に正の相関(SES等を統制しても)
  • 効果は通塾頻度に比例するが、上限がある
  • 効果は読解より計算で大きい傾向
  • 塾通いは家庭の経済状況に強く依存し、教育格差の主要因の一つ
  • 「塾に通っている子」がクラスに多いと、通っていない子の学習機会が見えにくくなる

注意したいこと

  • 塾の効果は「子どもの学力を一律に上げる」のではなく「教育機会に格差を生む」側面があります
  • 「塾で習った」前提で授業を進めると、通っていない子が取り残されます
  • 家庭の塾代は SES 格差をそのまま学力格差に転写する経路です
  • 公教育の役割は「塾の補完」ではなく「すべての子の学習権の保障」です

主な参考研究

海外の研究

  • Bray, M. (2009). Confronting the shadow education system: What government policies for what private tutoring? UNESCO IIEP. — 民間塾(shadow education)の国際比較研究。日本・韓国・中国を含む。
  • Buchmann, C., Condron, D. J., & Roscigno, V. J. (2010). Shadow education, American style: Test preparation, the SAT and college enrollment. Social Forces, 89(2), 435–461. — 米国の SAT 対策と進学の関連。

日本の研究・公式資料

  • 中室牧子(2015). 『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン. — 塾通いの効果を含む、教育経済学の入門書。
  • 松岡亮二(2019). 『教育格差――階層・地域・学歴』筑摩書房. — 塾通いと教育格差の構造を包括的に分析。
  • 文部科学省 — 子供の学習費調査(各年度). 学習塾費を含む家庭の教育費の継続調査。

注記

学習塾の効果は選択バイアスの統制が難しく、効果量の推定は研究によって幅があります。直近の3レベルメタ分析では中程度の正効果(d = 0.42-0.67)が報告されていますが、地域・科目・学年・経済状況によって効果は大きく異なります。本サイトの「+3ヶ月」は中庸寄りの控えめな換算値で、確定値ではありません。

参考にしている情報源
Stevenson & Baker (1992) Shadow education and allocation in formal schooling: Transition to university in Japan