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Strategy — 最終更新 2026-07-01

Hattie

指導法

停学・出席停止

問題行動への対応として子どもを学校から排除する措置。学力にも行動にも負の効果が確認されている。代替的な指導アプローチが推奨される。

学習効果
-2ヶ月
3月時点で、通常より約2ヶ月分学力が低下する傾向
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥····
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

Hattie (Visible Learning) d = -0.20

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Hattie の メタ分析を統合した教育研究。効果量で指導法を順位づけ">Visible Learning で負の効果。Valdebenito et al.(2019)の 37 RCT メタ分析では、排除を減らす学校ベースの介入は導入後 6 か月で停学・出席停止を有意に削減する(SMD = 0.30)が、12 か月以降は効果が半減し非有意。停学そのものの害は、APA ゼロトレランス検証(2008)や Noltemeyer, Ward & Mcloughlin(2015)のメタ分析(停学と学力の一貫した負の関連)に依拠する。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
37 件
総サンプルサイズ
排除(停学・出席停止)削減を目的とした学校ベース介入の RCT 37 件(4〜18 歳、1980 年以降の介入、27 データベースの系統検索)
効果量
介入は導入後 6 か月時点で排除措置を有意に削減(SMD = 0.30、95% CI 0.20〜0.41、p < .001)。12 か月以降のフォローアップでは効果が半減し統計的に非有意
主要メタ分析
エビデンスの限界

このメタ分析は『排除を減らす介入』の効果を検証したもので、停学そのものが学力を下げる因果効果を直接推定したものではない。停学と学力低下・中退・非行の関連は相関研究(Noltemeyer et al. 2015 など)に依拠し、交絡の可能性が残る。介入の効果は長期では持続が確認されていない。日本の義務教育段階では停学が原則認められないため、適用は別室指導などの小規模な排除の文脈に限られる。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の学校教育法では小中学校の子どもへの停学は原則認められていない(公立小中の義務教育段階、学校教育法施行規則第 26 条)。ただし出席停止は可能(26 条 3 項:児童の行動の問題のあるときなど)だが極めて稀。本項目は日本の小学校では『参照しない選択肢』。不登校支援・別室指導・外部連携等の代替が国際エビデンスと整合する。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(6)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ逆効果なのか
  3. 日本の小学校との関連
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究

一言でいうと

問題行動を起こした子どもを、一定期間学校に来させない措置です。日本の小学校では「出席停止」として稀に適用されます。研究では、学力にも行動改善にも効果がないことが一貫して示されており、むしろ問題を悪化させる傾向があります。

なぜ逆効果なのか

  • 学校から排除された子は学習機会を失い、学力が低下する
  • 排除は行動の原因(家庭の問題、発達の困難、対人関係のつまずき)に対処していない
  • 「排除された」経験が自己肯定感をさらに低下させ、学校への帰属意識を弱める
  • 停学中に家庭で適切な監督がなければ、問題行動がエスカレートすることもある
  • 排除と復帰を繰り返すパターンが、不登校や非行につながるリスクがある

日本の小学校との関連

日本の小学校で停学・出席停止が適用されるケースは少ないですが、以下の文脈で重要です。

  • 別室指導・教室からの排除 — 「廊下に出しなさい」「校長室で過ごしなさい」は小規模な排除であり、同じリスクを持つ
  • 不登校の子への対応 — 排除的な対応が不登校を悪化させるリスクがある
  • 代替的なアプローチの検討 — 行動への働きかけ(+3ヶ月)、SEL(+3ヶ月)、メンタリング(+2ヶ月)の方が効果的

研究からわかっていること

  • Hattieのメタ分析では効果量d=-0.20(約2ヶ月分の学力低下)
  • 停学を経験した子は、その後の非行リスクが高まることが縦断研究で確認されている
  • 特定の人種・社会経済層に偏って適用される傾向があり、公正性の問題も指摘される
  • 修復的アプローチ(restorative practice)の方が行動改善と関係修復に効果的であることが報告されている

注意したいこと

  • 「排除しない」は「何もしない」ではありません。排除の代わりに、原因に対処する積極的な支援が必要です
  • 暴力行為など安全に関わる場合は一時的な分離が必要な場面もあります。その際も、教育的支援の継続が前提です
  • 修復的アプローチ(当事者間の対話を通じた関係の修復)は、日本の学校文化とも親和性が高い
  • 「困っている子」を排除するのではなく「困っている子に支援を届ける」という転換が研究の示す方向です

主な参考研究

  • American Psychological Association Zero Tolerance Task Force (2008). Are zero tolerance policies effective in the schools? American Psychologist, 63(9), 852–862. — ゼロトレランス(厳罰主義)の効果を包括的に検証。効果がないだけでなく、害をもたらすことを示した。
  • Skiba, R. J., Arredondo, M. I., & Williams, N. T. (2014). More than a metaphor: The contribution of exclusionary discipline to a school-to-prison pipeline. Equity & Excellence in Education, 47(4), 546–564. — 排除的懲罰が社会的排除の連鎖につながるリスクを分析。
  • 文部科学省 (2023). 「生徒指導提要(改訂版)」. — 日本の生徒指導の基本方針。懲戒より発達支持的な指導を重視する方向が示されている。
参考にしている情報源
Valdebenito, Eisner, Farrington, Ttofi & Sutherland (2019) What can we do to reduce disciplinary school exclusion? A systematic review and meta-analysis