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Strategy — 最終更新 2026-05-21

EEF

指導法

習熟度別グループ編成

学力レベルで子どもをグループ分けして指導する方法。日本の算数で広く実施されるが、効果は+1ヶ月と非常に小さい。

学習効果
+1ヶ月
3月時点で、通常より約1ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥¥···
対象
算数 · 全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit + 1 ヶ月 ★★★ ☆☆

EEF Toolkit で +1ヶ月・エビデンス★3。学力進捗 は全体平均で習熟度別編成がやや低く、事前学力上位の児童で約 2 ヶ月遅れる一方、事前学力下位の児童は習熟度別と混合で同等(習熟度別編成は学力面では害なし、利益も乏しい)。FSM(就学援助相当)児童でも学力進捗に両群差はなく、社会経済的に不利な児童が習熟度別編成でさらに不利になるとは言えない(EEF 2026 報告の強調点)。自己肯定感 は混合校が有利で、特に事前学力下位の児童で中程度の負効果が観察される(UCL Student Grouping Study, Taylor & Hodgen 2026)。Francis et al.(2017)の英国縦断研究でも類似の不均衡が確認されている。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
1 件
総サンプルサイズ
97 校 / Year 7-8 数学(11-13 歳)
効果量
学力進捗: 全体 -1 ヶ月(混合 vs 習熟度別編成)、事前学力上位の児童 -2 ヶ月、事前学力下位の児童・FSM 児童は両群同等。自己肯定感: 全体 small / FSM 児童 small / 事前学力下位の児童 中程度の負効果(いずれも混合校が高い)
主要メタ分析
エビデンスの限界

英国 Year 7-8(中学校相当)数学の準実験的(quasi-experimental)マッチング比較で、無作為割付ではない。日本の小学校算数とは校種・教科の文脈が異なるため、自己肯定感への効果方向は参考に留め、学力進捗の小ささは Steenbergen-Hu et al. (2016) のメタ分析と整合的に受け取れる。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の算数で広く実施される『習熟度別少人数指導』は EEF の習熟度別編成カテゴリ(setting-streaming)に近い 側面を持ち、効果が限定的であることを認識する必要がある。下位グループに固定される子どもの自己肯定感低下という負の効果は日本でも報告されている(松尾 2013 等)。EEF は small-group-tuition(+4) の方を推奨しており、固定的な習熟度別編成ではなく、一時的・対象を絞った・流動的な少人数指導が効果的。日本の現場でグループ編成を検討する際の重要な論点。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(7)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果が小さいのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連する学習指導要領

一言でいうと

子どもを学力レベルによってグループ分けし、それぞれの到達度に合わせて指導する方法です。日本では算数の「習熟度別指導」として広く実施されていますが、学力への効果は**+1ヶ月と非常に小さい**ことが研究で示されています。

なぜ効果が小さいのか

「レベルに合わせれば効率的に学べる」という直感に反して、効果が小さい理由は:

  • 学力進捗 では事前学力上位の児童はやや伸びるが、事前学力下位の児童は習熟度別編成と混合でほぼ差がない。全体としても +1 ヶ月と小さい
  • 自己肯定感 が混合校に比べて下がりやすく、特に下位グループに配置された子で中程度の負の影響が報告される(UCL Student Grouping Study, Taylor & Hodgen 2026)
  • グループが固定化されると、下位から上位への移動がほとんど起きない(ラベリング効果)
  • 教師の期待が無意識にグループによって変わってしまう

日本の小学校で取り入れるヒント

習熟度別指導そのものを否定するわけではありませんが、以下の工夫が必要です。

  • グループを流動的に運用する(単元ごとに入れ替え、固定化しない)
  • 「できない子のグループ」というラベリングを避ける。名称と伝え方に配慮する
  • 下位グループの指導こそ、経験豊富な教師が担当する(逆になりがち)
  • 習熟度別の時間を限定し、異質グループでの学び合い(協同学習)と組み合わせる
  • 効果が+1ヶ月しかないことを踏まえ、他の介入(フィードバックメタ認知)に時間を振る判断も重要

研究からわかっていること

  • メタ分析(Steenbergen-Hu et al. 2016)では学力効果量 +1 ヶ月。30 項目中で最も効果が小さい部類です
  • 学力進捗 は事前学力上位の児童にやや正、事前学力下位の児童・FSM(就学援助相当)児童は習熟度別編成と混合でほぼ同等(格差は『下位が下がる』ではなく『上位だけが乗る』形で広がる。EEF はこの「disadvantaged(社会経済的に不利な)児童に害なし」を 2026 報告で強調)
  • 自己肯定感 は混合校が有利で、UCL Student Grouping Study(Taylor & Hodgen 2026)では特に事前学力下位の児童で中程度の負効果が観察された
  • 学級内の一時的なグループ分けは、学級間の固定的な分けよりやや効果が大きい
  • 効果は教師の指導力と、グループの流動性に大きく依存します

注意したいこと

  • 「習熟度別にすれば学力が上がる」という前提は研究と整合しません
  • 学力進捗 の格差は「下位が下がる」のではなく「上位だけが乗りやすい」形。下位の子に学力面の害はありませんが、メリットも乏しいことに注意が必要です
  • 自己肯定感 への負の影響(混合校に比べた事前学力下位の児童の中程度の負効果)が、固定的な習熟度別を選ぶ最大のコストです
  • 日本の算数で広く実施されている実態を踏まえ、「やめるべき」ではなく「やり方を改善すべき」と捉えるのが現実的です

主な参考研究

  • Steenbergen-Hu, S., Makel, M. C., & Olszewski-Kubilius, P. (2016). What one hundred years of research says about the effects of ability grouping and acceleration on K-12 students’ academic achievement. Review of Educational Research, 86(4), 849–899. — 100年分の研究を統合したメタ分析。能力別グループ編成の効果は全体的に小さいことを確認。
  • Taylor, B., & Hodgen, J. (2026). The Student Grouping Study: Evaluation Report. UCL Institute of Education / Education Endowment Foundation(EEF プロジェクトページ)。英国 97 校・Year 7-8 数学の準実験的評価(2019-2025)。学力進捗は混合がわずかに有利だが事前学力下位の児童・FSM(就学援助相当)児童は両群同等、自己肯定感は混合校が有利で特に事前学力下位の児童で中程度の負効果。
  • EEF (2021). Setting and streaming: Evidence review. — 効果量+1ヶ月。上位には正、下位には負の効果で相殺される構造を指摘。
  • Ireson, J., & Hallam, S. (2001). Ability grouping in education. Paul Chapman Publishing. — 能力別グループ編成の教育社会学的分析。固定化のリスクを詳述。

関連する学習指導要領

参考にしている情報源
EEF Teaching and Learning Toolkit — Setting and streaming
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