一言でいうと
学校図書館の蔵書整備、司書教諭・学校司書の配置、子どもが図書館を使いやすくするための運営の工夫を含む取り組みです。日本では学校図書館法・読書活動推進法に基づき制度化されていますが、配置率は自治体間で大きな差があります。
なぜ効果があるのか
子どもの読書習慣は、本への物理的なアクセスのしやすさに大きく左右されます。学校図書館が機能していると、家庭に本がない子どもにも「読む機会」が確保されます。また、司書がいる学校では、子どもの興味に応じた本の紹介や、教科と連動した調べ学習の支援が行われやすくなります。海外の研究では、司書の配置と学力テストの間に正の相関が繰り返し報告されています。ただし何が効いているのか(司書がいること自体か、蔵書か、司書の活動量か)については研究間で一致していません。
日本の小学校で取り入れるヒント
- 学級文庫だけでなく、学校図書館への定期的な来館を時間割に組み込む
- 司書(または図書担当)と教科担任が連携し、調べ学習の単元を共同で設計する
- 児童が借りやすい運営(開館時間・貸出冊数・延滞ペナルティなど)を見直す
- 図書委員会の活動を通じて子ども自身が運営に関わる機会を作る
- 自治体の予算要望で「学校司書配置」を継続的に求める
研究からわかっていること
- 常勤の有資格司書がいる学校の児童は、いない学校の児童より学力テストのスコアがやや高いと報告されています(Wine 2020 の準実験では Cohen’s d = .08〜.25 で、著者は「すべて小さな効果」と明記)
- 州を単位とした分析では、児童 1 人あたりの蔵書冊数と 4 年生の読解力スコアに正の相関があります(Krashen 1995、r = .495)。ただし州単位の 1 本の分析であり、蔵書を増やせば読解力が上がるという因果を示すものではありません
- 効果は低所得層・人種的マイノリティ・障害のある児童で大きいと報告されています。ペンシルベニア州の調査では、常勤の有資格司書がいる学校で読解の最下位段階の児童が全体では 1.6 ポイント少なかったのに対し、黒人児童では 5.5 ポイント、障害のある児童では 4.6 ポイント少なくなっていました(Lance & Kachel 2018)
- 司書がいること自体とスコアの正の関連が報告される一方、Lance & Kachel (2018) は、司書が授業に入る・教員と共同で単元を設計するなど活動時間が長い学校ほどスコアが高いとも報告しています。ただし蔵書規模と司書の活動量のどちらがより効くかは研究間で一致しておらず、Krashen (1995) の同じ回帰では蔵書が正・司書のサービス量が負で、著者自身が説明のつかない結果としています
注意したいこと
- 司書配置の効果は、相関研究が中心であり因果効果の確定はこれからです
- 司書がいても、教師との連携が薄いと活用度が上がりません
- 予算削減で「司書配置」が真っ先に切られやすい現実があります
- 電子書籍の増加に伴い、伝統的な学校図書館の役割再定義も議論されています
主な参考研究
海外の研究
- Lance, K. C., & Kachel, D. E. (2018). Why school librarians matter: What years of research tell us. Phi Delta Kappan, 99(7), 15–20. — 米国での学校司書配置と学力の関連を包括的にレビュー。効果は低所得層・人種的マイノリティ・障害のある児童で大きいと報告。
- Wine, L. D. (2020). Impact of school librarians on elementary student achievement. Doctoral dissertation, Old Dominion University. — ノースカロライナ州の小 4〜5 年生を属性でマッチングした準実験。司書のいる学校のスコアが有意に高いが、効果量は d = .08〜.25 と小さい。
- Krashen, S. D. (1995). School libraries, public libraries, and the NAEP reading scores. School Library Media Quarterly, 23(4). — 41 州を単位に全米学力調査の読解スコアと学校図書館の蔵書冊数の相関(r = .495)を報告。同じ回帰で司書のサービス量は負の相関で、著者自身が説明のつかない結果としている。
- Krashen, S. (2004). The power of reading: Insights from the research (2nd ed.). Libraries Unlimited. — 自由読書と学校図書館の効果を体系的にまとめた古典。
日本の研究・公式資料
- 文部科学省 — 学校図書館の現状に関する調査(各年度). 司書教諭・学校司書の配置率、蔵書数、開館状況などを継続的に調査。
- 全国学校図書館協議会 — 各種統計・提言. 日本の学校図書館の実態と政策提言。
注記
学校図書館・司書配置の効果に関する RCT は実施が困難です。Lance & Kachel(2018)を含む既存研究の大半は 観察研究・相関研究 で、効果はパーセント表記(例: 「司書配置のある学校で Advanced スコアの児童が約 8% 多い」)で報告されています。効果量を Cohen の d や月数に換算した確定的な数値は存在しないため、本サイトの「+1ヶ月」は控えめな暫定値です。