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Strategy — 最終更新 2026-06-15

日本研究 Hattie

指導法

プログラミング教育

2020年から小学校で必修化。プログラミング的思考(論理的思考力)の育成が目的。学力への直接効果のエビデンスは蓄積中。

学習効果
+1ヶ月
3月時点で、通常より約1ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★☆☆☆
コスト
¥¥¥··
対象
算数 · 理科 · 総合
中学年 · 高学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

日本研究 + 1 ヶ月 ★★ ☆☆☆ 文部科学省

2020 年度から小学校で必修化(新学習指導要領)。『プログラミング的思考』の育成が目的 で、プログラミング言語の習得は副次的。国内の大規模追跡調査はまだ無く、学力への効果は実証段階。

Hattie (Visible Learning) d = 0.28

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Scherer, Siddiq & Sánchez Viveros(2019)の 105 研究・539 効果量の3レベルメタ分析では、プログラミング学習の全体的な転移効果は g=0.49(中程度)。近転移(プログラミングスキル自体)g=0.75、遠転移 g=0.47 で、遠転移は創造的思考(g=0.73)や数学的スキル(g=0.57)で大きい一方、学業成績そのものへの効果は g=0.28 と小さく、読み書き(literacy)はほぼゼロ(g=-0.02、非有意)。未処置対照群の研究や出版済み研究ほど効果量が大きい傾向も報告されている。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
105 件
総サンプルサイズ
Scherer, Siddiq & Sánchez Viveros (2019) が 105 研究・539 効果量を3レベル・ランダム効果モデルでメタ分析(プログラミング学習の認知的転移効果)
効果量
全体的な転移効果 g=0.49 [0.37, 0.61](中程度)。近転移(プログラミングスキル自体)g=0.75 [0.39, 1.11]、遠転移(他の認知スキルへの転移)g=0.47 [0.35, 0.59]。遠転移の内訳は創造的思考 g=0.73・数学的スキル g=0.57・メタ認知 g=0.44・推論 g=0.37・空間 g=0.37 で、学業成績は g=0.28、読み書き(literacy)は g=-0.02(非有意)
エビデンスの限界

効果はプログラミングスキル自体への近転移(g=0.75)が最大で、他教科・他能力への遠転移ほど減衰する。特に学業成績への効果は g=0.28 と小さく、読み書きはほぼゼロ(g=-0.02・非有意)。効果量は研究デザインに左右され、未処置対照群を用いた研究や出版済み研究ほど大きく出る(出版バイアス)。日本のプログラミング教育は独立教科ではなく算数・理科等に統合する設計のため、メタ分析の介入研究(多くは専用カリキュラム)より効果はさらに小さくなりうる。

日本の文脈で考慮したいこと

日本のプログラミング教育必修化は国際的には珍しい設計で、独立した教科ではなく 算数・理科・総合等の既存教科の中で プログラミング的思考を育てる枠組み。このため『プログラミング授業の効果』を単独で測定するのが難しく、効果量の推定は困難。フロントマター +2 はやや楽観的で +1 に調整。Scherer 2019 の効果量は好条件下の値で、日本の教科内統合型の実装ではさらに小さくなる可能性がある。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(11)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 海外の研究(効果量の根拠)
  8. 日本の研究・公式資料
  9. 注記
  10. 関連する政策動向
  11. 関連する学習指導要領

一言でいうと

2020年から小学校で必修化された、プログラミング的思考(論理的に手順を組み立てる力)を育てる教育です。独立した教科ではなく、算数・理科・総合的な学習などの既存教科の中に組み込んで行います。

なぜ効果があるのか

プログラミング教育の本質は、コードを書くことではなく「手順を論理的に組み立て、検証し、修正する」という思考プロセスを体験することです。この思考力は、算数の問題解決や理科の実験設計など、教科学習とも接続します。また、試行錯誤の中で「失敗→修正→改善」のサイクルを自然に学べる点が、メタ認知の育成にもつながります。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • まずは「アンプラグド(PCを使わない)」から始める。カードやブロックで手順を考える活動
  • Scratch(スクラッチ)やViscuit(ビスケット)など、ビジュアルプログラミングツールを使う
  • 算数「正多角形の作図」(5年生)は、プログラミング教育の教科書的な題材
  • 理科「電気の利用」(6年生)で、センサーを使ったプログラミングを行う
  • 「こう動かしたい → どう命令すればいいか」を子ども自身に考えさせ、教師が答えを言わない

研究からわかっていること

  • プログラミング教育の学力への直接的な因果効果を示すメタ分析は、まだ限られています
  • 計算論的思考(computational thinking)の育成効果については、正の結果を示す研究が増えています
  • 論理的思考力や問題解決能力への効果は、複数の準実験研究で報告されています
  • 効果は「プログラミングそのもの」より「教師の指導設計」に依存することが示唆されています

注意したいこと

  • 「プログラミングの授業をすれば論理的思考が育つ」という単純な因果ではありません。指導設計が鍵です
  • 教師のICTスキルや研修機会の格差が、授業の質に直結します
  • 機器のトラブル対応に授業時間を取られるリスクがあります。事前の準備と代替手段が必要です
  • エビデンスが十分に蓄積されていない領域であり、今後の研究の進展を見守る必要があります

主な参考研究

海外の研究(効果量の根拠)

日本の研究・公式資料

  • 文部科学省 (2020). 「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」. — 小学校プログラミング教育の目的・内容・指導例を示した公式ガイド。プログラミング的思考の定義を明示。
  • 堀田龍也・佐藤和紀 (編) (2019). 『小学校プログラミング教育の考え方・進め方』 黎明書房. — 日本の小学校におけるプログラミング教育の実践方法を体系的に整理した書籍。

注記

効果量(+1ヶ月)は推定値であり、プログラミング教育の学力への直接的な因果効果を示すメタ分析はまだ限られています。計算論的思考の育成効果については正の結果を示す研究が増えていますが、日本国内でのRCTは実施されていません。

関連する政策動向

2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されました。論理的思考力の育成という目的は研究とも接続しますが、学力への直接的な因果効果を示すメタ分析はまだ限られています。「プログラミングの授業をすれば論理的思考が育つ」という単純な期待は慎重に扱う必要があります。

政策とエビデンスの対照表

関連する学習指導要領

参考にしている情報源
小学校プログラミング教育の手引 — 文部科学省