一言でいうと
まず問題を提示し、子どもが自力で考え、多様な解法を出し合い、比較・検討することで理解を深める学習です。 日本の「問題解決学習」は国際的に高く評価されており、TIMSSビデオ研究などで注目されてきました。
なぜ効果があるのか
教師が解き方を先に見せてしまうと、子どもは「手順の再現」に終始しがちです。問題から出発することで、既有知識を総動員する必要が生まれ、概念的な理解が促されます。 また、異なる解法を比較・検討する「練り上げ」の過程で、数学的な見方・考え方が鍛えられます。 結果として、転移可能な深い理解が育ちます。
日本の小学校で取り入れるヒント
- 「本時の問題」を1つに絞り、子どもが多様な解法を出せるような問題を選ぶ
- 自力解決の時間を十分に確保し、机間指導で子どもの考えを把握する
- 全体共有では2〜3つの解法を意図的に取り上げ、比較・検討させる
- 「練り上げ」の場面で「どこが同じ?どこが違う?」と問いかけ、数学的な見方を引き出す
- 板書計画を事前に立て、子どもの思考の流れが見える板書を意識する
研究からわかっていること
- 問題解決型の指導は、手続き的な知識だけでなく概念的理解を育てることが確認されています。
- 日本の算数授業はTIMSSビデオ研究で「問題解決型」の典型として分析されました。
- 教師の発問の質と「練り上げ」の深さが、学習効果を大きく左右します。
- 効果量は約7ヶ月分とされていますが、教師の力量への依存度が高い手法です。
注意したいこと
- 「問題を出して放置」では効果は出ません。教師の見取りと発問が不可欠です。
- 基礎的な計算力が不足していると、問題解決以前につまずく子どもが出ます。基礎練習との両立が大切です。
- 1時間の授業で「つかむ→考える→比べる→まとめる」の流れを無理に詰め込みすぎないよう注意が必要です。
主な参考研究
- Hiebert, J., Gallimore, R., Garnier, H., et al. (2003). Teaching Mathematics in Seven Countries: Results from the TIMSS 1999 Video Study. NCES. — 7カ国の数学授業をビデオ分析。日本の授業が問題解決型の構造を持つことを国際比較で明示。
- Stigler, J. W., & Hiebert, J. (1999). The Teaching Gap: Best Ideas from the World’s Teachers for Improving Education in the Classroom. Free Press. — 日本の授業研究と問題解決型学習の強みを国際的に紹介した著作。
- Kapur, M. (2014). Productive failure in learning math. Cognitive Science, 38(5), 1008–1022. — 最初に「失敗」する経験が、その後の理解を深めることを実証。問題解決型学習の理論的根拠を補強。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 総則編 — 算数科における「数学的活動」として、日常の事象や数学の事象から問題を見いだし、解決する活動が明記されています。問題解決型学習はその中核的な手法です。