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Strategy — 最終確認 2026-09-03

EEF

指導法

身体活動

運動や体育活動の量を増やす取り組み。学力への直接効果は+2ヶ月と小さいが、集中力や健康面に好影響。

学習効果
+2ヶ月
3月時点で、通常より約2ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★★★☆
コスト
¥¥···
対象
体育 · 全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit + 2 ヶ月 ★★★★ ☆

EEF Toolkit の 2025 年 5 月レビュー(136 研究)で +2ヶ月。確実性評価は 5 段階中 4 で、独立評価を受けていない研究の割合が高いことを理由に南京錠を 1 つ失っている。学力への効果は小さく、介入によるばらつきが大きい。EEF は、スポーツそのものより『プログラムの質』と『学習との接続の強さ』が効果を左右し、読み書き・算数の短時間の指導を組み込んだ課外活動の方が学力面の効果が出やすいと整理している。一方で、身体活動には健康・体力・発達の面での価値があり、EEF もその点を学力への効果とは別に述べている。Donnelly et al.(2016)の系統的レビューは、身体活動が子どもの認知機能に利益をもたらすという見方を多くの研究が支持する一方、学力への効果を検証した対照実験の結果は一貫しないと結論している。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
26 件
総サンプルサイズ
メタ分析 26 介入研究・児童 10,205 人(4〜13 歳)。ランダム効果モデルでプール
効果量
身体活動介入のプール効果量(95%CI)は数学関連スキル 0.21〔0.09, 0.33〕・読解 0.13〔0.02, 0.24〕・総合スコア 0.26〔0.07, 0.45〕でいずれも有意。言語関連スキルは 0.16〔−0.06, 0.37〕で有意でなく、授業中の課題従事(on-task)時間は 0.77〔0.22, 1.32〕と最も大きい
主要エビデンスレビュー
Álvarez-Bueno, Pesce, Cavero-Redondo, Sánchez-López, Garrido-Miguel & Martínez-Vizcaíno (2017). Academic Achievement and Physical Activity: A Meta-analysis
エビデンスの限界

学力の測定に用いられた尺度が研究間で多様なこと、放課後の身体活動介入の効果を報告した研究が限られることが限界。対象は運動を意図的に与えた介入研究で、効果は学力領域によって差があり、言語関連スキルへの効果は有意ではなかった。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の小学校は体育が週 2-3 時間必修で、休み時間・昼休みの自由遊びも含めると国際的に見て身体活動時間は確保されている方。運動量をこれ以上増やす根拠として EEF の +2 を読むより、EEF が示す設計上の指針の方が参照しやすい。EEF は、スポーツ単体より『読み書き・算数の短時間の指導を組み込んだ課外活動』の方が学力面の効果が出やすいとしており、これは放課後子供教室や長期休業中の取り組みの設計に当てはめやすい。健康・生活リズム・メンタルヘルスへの効果は、学力への効果とは別に価値がある。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(8)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があると考えられるのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連する学習指導要領
  8. 関連読み物

一言でいうと

運動量や身体活動の機会を意図的に増やす取り組みです。 学力への効果は+2ヶ月と小さいものの、健康・体力・発達の面での価値は、学力への効果とは別に EEF も述べています。

なぜ効果があると考えられるのか

EEF は、身体活動がどのように学力に影響するのかははっきりしていないと明記しています。 運動そのものが効いているのか、研究の中で運動に組み合わされていた学習活動が効いているのかは分かっていません。 一方で、身体活動が子どもの認知機能に利益をもたらすという見方は、多くの研究が支持しています(Donnelly et al. 2016)。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 朝の活動として短時間の運動を取り入れる
  • 授業の合間に、立ち上がって体を動かす時間を1分でも作る
  • 体育の時間を、苦手な子も楽しめる設計にする
  • 休み時間に外で遊ぶ文化を学級で大切にする
  • 運動が「できる/できない」ではなく「楽しむ」対象であることを伝える

研究からわかっていること

  • 学力は平均して約2ヶ月分前進します。効果は小さく、介入によるばらつきが大きいことに注意が必要です。
  • 効果を左右するのは活動の種目より、プログラムの質と学習との接続の強さだと報告されています。読み書きや算数の短時間の指導を組み込んだ課外活動の方が、スポーツ単体より学力面の効果が出やすいとされています。
  • 研究の多くは就学前・小学校で行われていますが、効果は中学校段階でも同程度以上と報告されています。読解・算数のいずれにも同じ程度の効果が示されています。
  • 認知機能への効果は Donnelly et al.(2016)の系統的レビューが支持しています。ただし同レビューは、学力への効果を検証した対照実験の結果は一貫しないとも述べています。

注意したいこと

  • 「学力向上のため」だけに身体活動を位置づけると本質を見失います。
  • 体育が苦手な子にとって苦痛にならないよう、活動設計に配慮します。
  • 運動量を増やすことが、他の学習時間を削る形にならないよう、全体のバランスを考えます。

主な参考研究

  • Álvarez-Bueno, C., et al. (2017). Academic Achievement and Physical Activity: A Meta-analysis. Pediatrics, 140(6), e20171498. — 26 の介入研究・児童 10,205 人のメタ分析。数学・読解・総合スコアに小さな正の効果、授業中の課題従事(on-task)に中程度の効果。
  • Singh, A., et al. (2012). Physical activity and performance at school. Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine, 166(1), 49–55. — 14研究のレビュー。身体活動と学力の間に正の関連があるが、因果関係の立証には限界あり。
  • Donnelly, J. E., et al. (2016). Physical activity, fitness, cognitive function, and academic achievement. Medicine & Science in Sports & Exercise, 48(6), 1197–1222. — 身体活動が認知機能と集中力に正の効果を持つことを包括的にレビュー。
  • Physical activity. Education Endowment Foundation, Teaching and Learning Toolkit. — 2025年5月のレビュー(136研究)で学力への効果は+2ヶ月、確実性評価は 5 段階中 4。学習と接続したプログラムの方が学力面の効果が出やすいと整理している。

関連する学習指導要領

関連読み物

  • 『運動脳』(新版) アンデシュ・ハンセン (2022), 御舩由美子訳, サンマーク出版. — 『スマホ脳』の著者が、運動と脳・認知機能・気分の関係に焦点を当てた書籍。日本国内 67 万部超。記憶・集中・ストレス耐性に運動がどう作用するかを研究を引きながら平易に解説しており、本戦略「学校での身体活動」の背景理解に役立つ。
参考にしている情報源
EEF Teaching and Learning Toolkit — Physical activity