← 指導法一覧へ戻る

Strategy — 最終更新 2026-06-16

日本研究 Hattie

指導法

デジタル教科書

紙の教科書をデジタル化したもの。GIGAスクール構想で導入が進むが、読解では紙の方が優位(g = -0.21、Delgado 2018)というメタ分析もあり、効果は使用条件・教科に強く依存する。

学習効果
±0ヶ月
学力への効果は確認されていない
エビデンス
★★☆☆☆
コスト
¥¥¥¥·
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

日本研究 0 ヶ月 ★★ ☆☆☆

文部科学省の学習者用デジタル教科書実証事業(2021-2024)では、紙とデジタルで学力効果に大きな差は見られず、『デジタル化で学力が上がる』エビデンスは現時点で無い。児童の操作性・読みやすさ・バッテリー持ち等の実用面の課題が残る。

Hattie (Visible Learning) d = -0.21

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Delgado et al.(2018)の 54 研究メタ分析で、読解においては 紙>デジタル の優位性が確認されている(g=-0.21)。この差は時間制約・説明文・長文で特に大きい(digital-vs-paper-reading を参照)。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
54 件
総サンプルサイズ
紙とデジタル端末で同等のテキストを読んだ際の読解力を比較した 54 研究(被験者間計画 38・被験者内計画 16)、計 171,055 名。2000〜2017 年に発表された研究を対象とする
効果量
読解では紙が画面より優位: 被験者間計画で Hedges' g = -0.21(95%CI [-0.28, -0.14])、被験者内計画で dc = -0.21(95%CI [-0.37, -0.06])。両計画とも同一の差で、Cohen の基準では小さいが有意(負値はデジタルが劣位)
エビデンスの限界

メタ分析は『紙 vs 画面での読解』の比較であり、動画・音声・書き込み等を備えた日本の多機能な学習者用デジタル教科書そのものの効果検証ではない。効果は小さく、3 つの調整変数に依存する: ①時間制約下では紙優位が拡大(g = -0.26)するが自己ペースでは縮小(g = -0.09)、②情報文・混合文では紙優位だが物語文のみでは差が消える(g = 0.01)、③出版年が新しいほど紙優位が拡大した(2000 年から 2017 年)。読解以外(学習意欲・アクセシビリティ・音声/動画教材・協働的な書き込み)は本メタの対象外で、戦略全体の評価とは区別が必要

日本の文脈で考慮したいこと

日本では紙の教科書を無償配布する制度が定着しており、デジタル教科書は追加措置(併存)として議論されている。欧米の『紙 vs デジタル』論争とは前提が異なる。コスト +4 は端末・ライセンス・インフラの追加費用を反映。『デジタル化すれば学力が上がる』という素朴な期待は Delgado 2018 のエビデンスに反する。使い分け(長文読解は紙、検索・書き込み・録音はデジタル)が現実的。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(9)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果が複雑なのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 海外の研究(効果量の根拠)
  8. 日本の研究・公式資料
  9. 注記

一言でいうと

紙の教科書の内容をデジタル化し、タブレット等の端末で閲覧・操作できるようにしたものです。動画・音声・拡大表示・書き込み・検索などの機能を持ちます。日本では2024年度から小学校5年生〜中学校の英語で「主たる教材」として正式に導入され、算数・数学などへの段階的拡大も進んでいます。

なぜ効果が複雑なのか

デジタル教科書は 「紙の教科書の置き換え」ではなく「新しい学びの可能性」 として捉えるべきです。海外の研究では、長文読解では紙の方が理解度が高いという結果が繰り返し報告されている一方、動画・音声を使った言語学習や、書き込みを多人数で共有する活動では、デジタルの優位性が示されています。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 紙とデジタルを併用 する設計にする(完全置き換えを目指さない)
  • 長文読解・概念理解には紙、検索・共有・即時フィードバックにはデジタル
  • 書き込み機能を活用し、子どもの思考過程を可視化する
  • 授業前の「使い方」指導を最初に丁寧に行う
  • 視力・姿勢への配慮を学校保健計画に組み込む

研究からわかっていること

  • 紙とデジタルを直接比較した研究では、長文読解は紙の方が有利との結果が多い(Delgado et al. 2018)
  • 一方、音声・動画・インタラクティブ要素を活用した場合は、特に語学・理科で正の効果
  • 日本国内の実証研究では、教師の活用設計が効果を大きく左右することが報告されている
  • 「ただ配布するだけ」では効果は出にくい

注意したいこと

  • デジタル教科書の効果は「機能」よりも「使い方」で決まります
  • 視力・睡眠への影響について、長期データはまだ限定的です
  • 通信トラブル・端末故障に備えた紙のバックアップが必要です
  • 家庭での持ち帰り運用は、家庭間の通信環境格差に配慮する必要があります

主な参考研究

海外の研究(効果量の根拠)

日本の研究・公式資料

  • 文部科学省 — 学習者用デジタル教科書の実証研究(各年度報告書). デジタル教科書の効果と課題を継続的に検証。
  • 文部科学省 — 「GIGAスクール構想の実現について」. 1人1台端末環境整備の基本方針。

注記

デジタル教科書を扱った大規模 RCT は国内外ともに限定的です。Delgado et al.(2018)のメタ分析では、読解に関する 54 研究で 紙が g = -0.21 で優位(つまりデジタルは小さく劣る)と報告されています。一方、語学・インタラクティブ学習・即時フィードバックでの活用ではデジタルの優位が示唆されています。本サイトの「0ヶ月」は読解における劣位とその他用途での優位が打ち消し合う暫定値で、教科・用途によっては正にも負にもなり得ます。

参考にしている情報源
文部科学省 — 学習者用デジタル教科書実証事業