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Strategy — 最終確認 2026-09-06

EEF

指導法

志向性への介入

「夢を持とう」「将来の目標を考えよう」といった働きかけ。EEF はエビデンスが極めて乏しいとして、学力効果の月数を公表していない。志向性だけを高める取り組みが学力の向上につながった例は、概して見られない。

学習効果
測定なし
学力への効果を月数で示せる研究がない
エビデンス
★☆☆☆☆
コスト
¥¥···
対象
全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF Toolkit

EEF は学力への効果について月数を公表していない。確実性評価が 5 段階中 0(extremely low)で、採択基準を満たす研究が 6 件しかないため(2025 年 10 月レビュー。2021 年 7 月時点は 3 件)。これは効果が無いという証拠ではなく、確かなエビデンスが無いということ。EEF はそのうえで、志向性と学力の関係は単純ではなく、志向性を高める取り組みが学力の向上につながった例は概して見られない、学力の向上と結びついた取り組みはほぼ例外なく学習面の要素を伴っている、と整理している。なお成長マインドセットのように学習場面での自己効力感・動機づけに働きかける介入は、このストランドではなくメタ認知自己調整学習の項目で扱われている。

Technical Appendix 研究の詳細
総サンプルサイズ
ERIC・PsycInfo・British Educational Index など 8 つの主要データベースを横断検索して 166,491 報告を特定し、重複・2000 年以前・英語以外・特別支援/学齢超過のみ・指導法/一般的学校改善・非研究などを除外して 1,827 報告に絞り込んだ系統的レビュー。動機づけ・期待・志向性・自己概念・自尊感情・自己効力感・統制の所在の 7 概念を検討した
エビデンスの限界

効果量の報告が研究間で一貫せず、同一の介入で 2 組以上の効果量が揃わなかったため、メタ分析は実施できない(単一の統合効果量はない)。志向性と学力の相関は確認されたが、SES や事前学力を統制すると関連は弱まり、志向性を高める介入が学力を改善することを示す RCT 等の厳密な評価は 1 件も見つからなかった。著者は『学力向上のみを目的とするなら、志向性以外の介入を選ぶべき』と結論している。

日本の文脈で考慮したいこと

日本のキャリア教育・総合的な学習の時間でも『夢を持とう』『将来の職業を考えよう』といった活動が広く行われている。EEF の整理が示すのは、単に『夢』や『憧れ』を喚起する取り組みが学力の向上につながった例は概して見られない という点。学力の向上と結びついた取り組みは、ほぼ例外なく学習面の要素を伴っていた。キャリア教育を『夢を語らせる時間』に終わらせず、『志向性 × 具体的行動(計画・スキル・実行)』として設計する工夫が鍵。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(7)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果が出にくいと考えられるのか
  3. 日本の小学校との関連
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連する学習指導要領

一言でいうと

「将来の夢を持とう」「目標を高く持とう」といった、子どもの志向性(aspiration)に働きかける介入です。EEFエビデンスが極めて乏しいとして、学力への効果の月数を公表していません。効果が無いという意味ではなく、確かなエビデンスが無いという意味です。そのうえで EEF は、志向性を高める取り組みが学力の向上につながった例は概して見られないと整理しています。

なぜ効果が出にくいと考えられるのか

多くの子どもは既に「将来◯◯になりたい」という夢を持っています。問題は、夢と日々の学習をつなぐ具体的な戦略や支援がないことです。

  • 「夢を持とう」と言われても、具体的に何をすればよいか分からない
  • 志向性が高くても、学習方法が分からなければ行動に結びつかない
  • 志向性が低い子に絞った取り組みでも、志向性そのものを引き上げられたかどうかがはっきりしない、と EEF は述べています
  • さらに、低かった志向性を引き上げることに成功した場合でも、そこから学力の向上が続くとは限らない、とも述べています

なお EEF は、成長マインドセットのように学習場面での自己効力感や動機づけに働きかける介入を、このストランドではなくメタ認知の指導の項目で扱っています。

日本の小学校との関連

キャリア教育や「将来の夢」を書かせる活動は日本の小学校で広く行われています。これらが無意味だということではなく、以下の視点が重要です。

  • 夢を語らせる活動だけで学力が上がることは、研究では示されていない
  • 夢と学習を接続する具体的な行動計画(何をどう勉強するか)とセットにする
  • 学力の向上と結びついた取り組みが学習面の要素を伴っていたことを踏まえ、メタ認知指導や学習戦略の指導と組み合わせる
  • 「夢がない」子を問題視するのではなく、目の前の学習そのものに意味を見出せる指導を優先する

研究からわかっていること

  • EEF は学力への効果の月数を公表していません。確実性評価は 5 段階中 0(extremely low)で、採択基準を満たす研究は 6 件です
  • 本サイトはこのページの効果量を「測定なし」(学力効果を月数で示せる研究が無い)、エビデンスの強さを★1 として独自に評価しています。効果が無いと確かめられたのではなく、確かなエビデンスが無いという意味です。EEF 自身の確実性評価は 5 段階中 0 です
  • 子どもの志向性自体は既に高いことが多く、学力の伸び悩みは志向性の低さではなく、志向性と、それを実現するための知識・技能との間の隔たりから生じている場合が多いと EEF は述べています
  • 学力の向上と結びついた取り組みは、ほぼ例外なく学習面の要素を伴っていた、と EEF はまとめています
  • EEF は、英国の研究では社会経済的な背景が異なっても子どもの志向性の水準は似ており、高等教育への進学率の差は主に学力によって説明される、と紹介しています

注意したいこと

  • この結果は「夢を持つことに意味がない」という意味ではありません
  • キャリア教育そのものを否定するものではなく、学力向上の手段としての裏づけが無いという限定的な知見です
  • 「夢を書かせて終わり」ではなく、具体的な学習行動への接続が必要です
  • メタ認知(+8ヶ月)や自己調整学習と組み合わせる設計の方が、研究の示す方向に近くなります
  • EEF は、志向性をめぐる考え方や姿勢は地域によって多様で、貧困率の高い地域について一般化を避けるよう注意を促しています

主な参考研究

  • Aspiration interventions. Education Endowment Foundation, Teaching and Learning Toolkit. — 2025年10月のレビュー(6研究)。確実性評価は 5 段階中 0(extremely low)で、学力への効果の月数を公表していない。志向性を高める取り組みが学力向上につながった例は概して見られず、効果があった取り組みはほぼ例外なく学習面の要素を伴っていたと整理している。
  • Gorard, S., See, B. H., & Davies, P. (2012). The impact of attitudes and aspirations on educational attainment and participation. Joseph Rowntree Foundation. — 志向性と学力の相関は見られるが、志向性を変えることで学力が変わるという因果関係は支持されないことを示した。
  • Gorard, S. (2012). Querying the causal role of attitudes in educational attainment. ISRN Education, 2012, 501589. — 上記レビューの査読付き・オープンアクセス版。166,491 報告から 1,827 報告に絞り込み、志向性と学力の相関は SES・事前学力を統制すると弱まること、志向性を高める介入が学力を改善することを示す厳密な評価は見つからなかったことを報告。

関連する学習指導要領

  • 小学校学習指導要領解説 特別活動編 — 学級活動の内容に「一人一人のキャリア形成と自己実現」が含まれています。志向性だけでなく、具体的な行動と結びつけることが重要です。
参考にしている情報源
EEF Teaching and Learning Toolkit — Aspiration interventions