一言でいうと
制服を導入・統一することで学力が向上するかどうかを検証した研究です。EEF はエビデンスが極めて乏しいとして、学力への効果の月数を公表していません。効果が無いという意味ではなく、確かなエビデンスが無いという意味です。帰属意識や規律の改善が期待されることがありますが、制服それ自体がそれらをもたらすという確かな研究は、ほとんど見つかっていません。
なぜ確かなことが言えないのか
制服の導入は、規律の徹底や学校文化づくりといった他の改善策と同時に行われることが多く、制服だけの効果を切り出して測ること自体が難しいという事情があります(EEF も同じ点を挙げています)。導入する学校の側にも偏りがあり(学力や規律に課題を抱える学校ほど導入しやすいなど)、比較の対象を揃えるのが困難です。採択基準を満たした研究は 8 件にとどまります。
日本の小学校との関連
日本の小学校では制服のない学校も多く、導入の是非が議論されることがあります。
- 制服の導入は学力向上の根拠にはならない
- 「制服があれば服装の格差が見えなくなる」という議論はあるが、研究は家庭の経済格差が制服の有無と関係なく学力に影響することを示している(松岡, 2019)
- 制服に費用をかけるなら、エビデンスの強い指導法への投資の方が費用対効果が高い
- 制服の意義を否定するものではないが、学力向上策として位置づけるのは妥当でない
研究からわかっていること
- EEF は学力への効果の月数を公表していません。確実性評価は 5 段階中 0(extremely low)で、採択基準を満たす研究は 8 件です
- 本サイトはこのページの効果量を「測定なし」(学力効果を月数で示せる研究が無い)、エビデンスの強さを★2 として独自に評価しています。効果が無いと確かめられたのではなく、確かなエビデンスが無いという意味です。EEF 自身の確実性評価は 5 段階中 0 です
- 英国では「制服で行動が良くなる」と広く信じられていますが、行動の改善は学びの土台にはなりえても、それだけで学力が伸びるとは限らない、と EEF は注意を促しています
- 学校文化や規律を整える広い学校改善の一部としてなら、制服をうまく組み込めるとされています
- 比較的厳密な Gentile & Imberman (2012) では、前向きな結果は中学・高校(とくに女子)の出席率と一部の言語スコアに偏り、小学生の学力への効果は弱く分析手法に左右されました
- Brunsma & Rockquemore (1998)(縦断調査データの二次分析・単一研究)は、出席・行動・物質使用には効果がなく、学力にはむしろ負の相関があると報告した。ただしこの解釈は Bodine (2003) に『同じデータはむしろ正の相関を示す/分析手法の誤用』と批判され、著者が反論(2003)するなど論争がある
注意したいこと
- 「確かなエビデンスが無い」は「制服に意味がない」と同義ではない。衣服の選択に伴うストレスの軽減など、学力以外の価値はあり得る
- ただし「学力を上げるために制服を導入する」という判断を支えるエビデンスは、現時点では見つかっていない
- 制服の方針は、教職員がそろって運用し続けることが欠かせないとされます。導入すれば自動的に何かが変わる類のものではありません
- 制服の費用が家庭の負担になるケースもあり、格差の観点からは逆効果になる可能性も
主な参考研究
- Brunsma, D. L., & Rockquemore, K. A. (1998). Effects of student uniforms on attendance, behavior problems, substance use, and academic achievement. Journal of Educational Research, 92(1), 53–62. — 縦断調査データの二次分析(単一研究)。出席・行動・物質使用に効果なし、学力には負の相関を報告。ただし解釈には後続の論争がある。
- Bodine, A. (2003). School uniforms, academic achievement, and uses of research. Journal of Educational Research, 97(2). — Brunsma & Rockquemore (1998) の負の相関の主張に対し、同じデータは全体・大半の学校種別でむしろ正の相関を示しており、負の結論は学校種別分析の誤用によると批判(著者は2003年に反論)。
- School uniform. Education Endowment Foundation, Teaching and Learning Toolkit. — 2025年10月のレビュー(8研究)。確実性評価は 5 段階中 0(extremely low)で、学力への効果の月数を公表していない。制服単独での学力・行動・出席率への効果について、確かな裏づけはほとんど無いとしている。
- 松岡亮二 (2019). 『教育格差――階層・地域・学歴』筑摩書房. — 日本における教育格差はSESに起因し、外見の統一では解消されないことを実証。