一言でいうと
子どもが今の力だけではできない課題に取り組むとき、教師が適切な支援(ヒント・手順の分解・モデルの提示など)を段階的に提供し、子どもができるようになるにつれて支援を減らしていく指導法です。ヴィゴツキーの 「最近接発達領域」(ZPD、一人ではできないが支援があればできる範囲) に基づく考え方です。
なぜ効果があるのか
難しすぎる課題は挫折を、簡単すぎる課題は退屈を生みます。足場かけは「ちょうど手が届くところ」に課題を設定し、必要な支援を付けることで、子どもが自力で到達できる範囲を広げます。支援を段階的に外す(fading)ことで、最終的に子どもが自立して取り組めるようになることを目指します。
日本の小学校で取り入れるヒント
- 算数の文章題で、いきなり解かせるのではなく「まず何が分かっていて、何を求めるか整理しよう」と手順を分ける
- 作文で、構成メモのテンプレートを渡す(慣れたら外す)
- 教師が自分の思考を声に出して見せる(モデリング)→ 子どもと一緒にやる → 子どもに任せる、の3段階
- 「困ったらここを見てね」というヒントカードを教室に掲示する
- 支援を外すタイミングを意識する。最終的に子どもが一人で取り組めるようにするのが足場かけのねらい
研究からわかっていること
- Belland et al. (2017) のメタ分析(144 研究、STEM 領域のコンピューターベース足場かけ)では Hedges’ g = 0.46(小〜中程度)
- Hattie の Visible Learning は 2017 年版の一覧で d = 0.82(コーエンの d、効果の大きさを示す指標)。現行のデータベースでは 0.57 で、Belland らのメタ分析も集計に含まれる
- オンライン学習での足場かけのメタ分析では 0.53(Zuo et al. 2023)。高等教育のオンライン学習を対象にした別のメタ分析では、認知面の学習成果で g = 0.65(Doo et al. 2020)
- EEF Toolkit に独立エントリは無く、Metacognition and self-regulation(+8 ヶ月)のページで、メタ認知を支える支援の一つとして触れられている
- van de Pol, Volman & Beishuizen (2010) のレビューは、足場かけの鍵となる特徴を 3 つ(子どもの様子に応じて支援を変える / 段階的に支援を外す / 子どもに任せる範囲を広げる)に整理した。効果を示唆する結果はあるが、効果を確かめた研究はまだ少ないとしている
- Belland et al. (2017) の対象は STEM(科学・技術・工学・数学)領域に限られる。ほかの教科での効果は、このメタ分析からは言えない
注意したいこと
- 「足場かけ」と「答えの先出し」は異なる。考えるプロセスを支援するのであって、答えを教えるのではない
- 支援を外すタイミングの判断が難しい。子どもの様子を観察して見極める力が必要
- 一律の足場(全員に同じヒント)と個別の足場(つまずきに応じたヒント)のどちらが効果的かは、はっきりしていない。Belland et al. (2017) では、コンピューター上の支援で、学習者の成績に応じて支援を変える方式と変えない方式などの間に効果の差は見られなかった
- 授業準備の負荷が増えるが、定型的な足場(テンプレート・チェックリスト)は使い回せる
主な参考研究
- van de Pol, J., Volman, M., & Beishuizen, J. (2010). Scaffolding in teacher–student interaction. Educational Psychology Review, 22(3), 271–296. — 足場かけを 3 要素(子どもの様子に応じて支援を変える / 段階的に支援を外す / 子どもに任せる範囲を広げる)で整理したレビュー。
- Wood, D., Bruner, J. S., & Ross, G. (1976). The role of tutoring in problem solving. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 17(2), 89–100. — 大人が子どもの問題解決を支える役割を説明するために、「足場かけ(scaffolding)」の比喩を持ち込んだ論文。
- Belland, B. R., Walker, A. E., Kim, N. J., & Lefler, M. (2017). Synthesizing results from empirical research on computer-based scaffolding in STEM education: A meta-analysis. Review of Educational Research, 87(2), 309–344. — コンピューターベースの足場かけを対象とした 144 研究・333 効果量のメタ分析。Hedges’ g = 0.46(小〜中)。
- Zuo, M., Kong, S., Ma, Y., Hu, Y., & Xiao, M. (2023). The effects of using scaffolding in online learning: A meta-analysis. Education Sciences, 13(7), 705. — 2011〜2021 年の 32 論文・83 効果量のメタ分析。オンライン学習での全体の効果量は 0.53。
- Doo, M. Y., Bonk, C. J., & Heo, H. (2020). A meta-analysis of scaffolding effects in online learning in higher education. International Review of Research in Open and Distributed Learning, 21(3). — 高等教育のオンライン学習を対象にした 18 論文・64 効果量のメタ分析。認知面の学習成果で g = .652、メタ認知・情意を含む学習成果全体で g = .866。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 総則編 — 「主体的・対話的で深い学び」の実現において、教師が適切に導く役割が重視されています。