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Strategy — 出典の最終確認 2026-09-28

EEF 日本研究

指導法

探究学習

子どもが自ら問いを持ち、調べ、考え、まとめ、表現する学習。ガイダンスを付けた探究は他の指導法より +3ヶ月(Alfieri ほか 2011, d=0.30)、ガイダンスのない発見学習は明示的な指導を下回る。ただし EEF の英国での試験は結果が分かれ、小規模な試験で +3ヶ月だった理科の探究型プログラムも、規模を広げた 2 つの試験では効果が確認されなかった。

学習効果
+3ヶ月
3月時点で、通常より約3ヶ月先の学力水準に到達
エビデンス
★★☆☆☆
コスト
¥¥···
対象
総合 · 理科 · 社会 · 全教科
中学年 · 高学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

EEF 試験評価

EEF が実施した Project Based Learning 試験(英国の Year 7〔11〜12 歳〕、24 校。教師が計画し、外部のコーチが支援する構造化された PBL)では、読み書きの力への明確な効果は確認されなかった(−2ヶ月、確実性は 5 段階中 1)。FSM〔就学援助相当〕の生徒には負の影響の可能性が示されたが、EEF はこの結果を慎重に解釈すべきとしている。EEF Toolkit に Inquiry-Based Learning の独立したエントリは無い。この試験は探究学習の一形態としての PBL を扱ったもので、探究学習全体の効果を示すものではないため、ページ上部の効果の目安には使っていない。

日本研究

日本の『総合的な学習の時間』は探究学習の一形態。日本国内で探究学習の学力への効果を検証した RCT は無い。海外のメタ分析(Lazonder & Harmsen、72 研究)は、探究にガイダンスを加えると学習成果が高まる(d=0.50)ことを示しており、「放任」ではなく「足場かけ」が鍵。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
72 件
総サンプルサイズ
探究学習中のガイダンス(足場かけ)の効果を検証した 72 研究のメタ分析(年齢層・ガイダンス種別を比較)
効果量
ガイダンスの効果は学習活動 d = 0.66(95% CI 0.44〜0.88)、課題遂行 d = 0.71(0.52〜0.90)、学習成果 d = 0.50(0.37〜0.62)。ガイダンスの種類が効果を左右したのは課題遂行のみ
主要エビデンスレビュー
エビデンスの限界

ページ上部の効果の目安(+3ヶ月)はこのメタ分析ではなく、ガイダンス付きの探究を他の指導法と比べた Alfieri ほか(2011)の d=0.30 による。Alfieri の値は成人を対象にした研究や運動技能など教科以外の課題の研究も含み、成人の方が子どもより効果が大きく、理科に限ると d=0.11 と小さい。このメタ分析が比較したのは『探究 vs 一斉指導』ではなく『ガイダンスの多い探究 vs 少ない探究』で、d = 0.50 は探究にガイダンスを加えることの効果。研究数の制約から年齢差は確定的な結論が出ていない。EEF の Project Based Learning 試験(構造化された PBL、確実性は 5 段階中 1)でも読み書きの力への明確な効果は確認されておらず、探究型の授業を取り入れるだけで学力が上がるとは言えない。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の「総合的な学習の時間」は世界的にも先進的な探究学習の枠組みだが、『放任』と『ガイダンス付きの探究』の区別が曖昧な実践も多い。Lazonder & Harmsen のメタ分析が示すように、探究にガイダンス(問いの立て方や調査の進め方への支援など。教師が出すものに限らず、教材やソフトウェアに組み込まれたものも含む)を加えると学習成果が高まる。なお EEF の PBL 試験は構造化された PBL で行われたが、それでも読み書きの力への明確な効果は見られなかった(脱落が多く、確実性は低い)。「子どもに任せる」のではなく「探究の方法を明示的に教える」姿勢が必要。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(11)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ効果があるのか
  3. 日本の小学校で取り入れるヒント
  4. 研究からわかっていること
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 海外のメタ分析(効果量の根拠)
  8. EEF の試験
  9. 日本の研究・公式資料
  10. 注記
  11. 関連する学習指導要領

一言でいうと

子どもが自分で問いを立て、情報を集め、分析し、結論を導く学習活動です。日本の学習指導要領では「総合的な学習の時間」の柱であり、「主体的・対話的で深い学び」の実現形でもあります。

なぜ効果があるのか

知識を「教わる」だけでなく、自分で「見つける」プロセスを経験することで、子どもの理解は質的に深くなります。探究を通じて、情報を集める力、分析する力、伝える力が統合的に育ちます。また、自分の問いに向き合う経験は、学習への内発的動機を高めます。

日本の小学校で取り入れるヒント

  • 「総合的な学習の時間」を、探究のサイクル(課題設定→情報収集→整理分析→まとめ表現)で設計する
  • 教師が答えを持っている課題ではなく、教師にも答えが分からない本物の問いに取り組ませる
  • 理科の実験を「手順通り」にやるだけでなく、仮説を立てる段階を子どもに委ねる
  • 社会科の調べ学習で「調べて終わり」にせず、「だから何が言えるか」まで考えさせる
  • 探究の成果を他者に伝える場(発表会・ポスターセッション)を設ける

研究からわかっていること

  • ガイダンスを付けた探究を他の指導法と比べたメタ分析(Alfieri ほか 2011、360比較)では効果量 d=0.30 で、約3ヶ月分の学習効果に相当します。一方、ガイダンスのない発見学習は明示的な指導を下回りました(d=−0.38)
  • Lazonder & Harmsen (2016)のメタ分析では、探究にガイダンスを加えると学習成果が高まりました(d=0.50)。これは「ガイダンスの多い探究」と「少ない探究」の比較で、探究と一斉指導の比較ではありません
  • ガイド(足場かけ)を伴う探究の方が、完全に自由な探究より効果が大きい傾向があります
  • 効果の検証は理科と算数・数学が中心です(Lazonder & Harmsen のメタ分析は数学・理科の研究のみ)。Alfieri ほか(2011)では、理科に限ると効果は小さくなります(d=0.11)

注意したいこと

  • 「何でも自由に」は探究ではありません。教師の足場かけ(問いの絞り方・調べ方の指導)が不可欠です
  • 探究のスキルを段階的に教える必要があります
  • 低学年では抽象的な探究は難しいため、生活科の体験活動を通じて基礎を育てます
  • 時間がかかるため、単元計画とのバランスに工夫が必要です

主な参考研究

海外のメタ分析(効果量の根拠)

  • Alfieri, L., Brooks, P. J., Aldrich, N. J., & Tenenbaum, H. R. (2011). Does discovery-based instruction enhance learning? Journal of Educational Psychology, 103(1), 1–18. — 164 研究のメタ分析。ガイダンスのない発見学習は明示的な指導を下回り(d=−0.38、108 研究・580 比較)、ガイダンスを付けた探究は他の指導法を上回った(d=0.30、56 研究・360 比較)。
  • Lazonder, A. W., & Harmsen, R. (2016). Meta-analysis of inquiry-based learning. Review of Educational Research, 86(3), 681–718. — 72研究のメタ分析。ガイダンスは課題遂行(d=0.71)と学習成果(d=0.50)を高めた。
  • Furtak, E. M., et al. (2012). Experimental and quasi-experimental studies of inquiry-based science teaching. Review of Educational Research, 82(3), 300–329. — 37研究のメタ分析。探究型理科授業の効果量d=0.50。

EEF の試験

日本の研究・公式資料

注記

効果量(+3ヶ月)は、ガイダンス付きの探究を他の指導法と比べた海外のメタ分析(Alfieri ほか 2011, d=0.30)に基づいています。英国の EEF の試験は結果が分かれているため、エビデンスの確からしさは5段階中2としています。理科の Thinking, Doing, Talking Science は約 40 校の試験で +3ヶ月でしたが、205 校・180 校に広げた試験ではいずれも 0ヶ月、PBL は −2ヶ月でした。これらは個別のプログラムの結果で、探究学習という手法そのものの効果量ではないため、月数はメタ分析の値を採っています。日本の「総合的な学習の時間」そのものの効果を厳密に検証したRCTは存在しません。ただし、全国学力調査の質問紙データでは、探究的な学習に取り組んでいる児童の学力が高いという相関が繰り返し確認されています。一方、国際調査の PISA 2015 では、探究型の理科の授業を多く受けている生徒ほど理科の得点が低いという逆向きの相関が報告されています(いずれも相関で、因果関係を示すものではありません)。

関連する学習指導要領

参考にしている情報源
Alfieri, Brooks, Aldrich & Tenenbaum (2011) Does discovery-based instruction enhance learning? Journal of Educational Psychology, 103(1)
このページを引用するときの表記例

「探究学習」EduEvidence JP(CC BY-SA 4.0)。https://edu-evidence.org/strategies/inquiry-based-learning/ (出典の最終確認 2026-09-28、参照 YYYY-MM-DD)