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Strategy — 出典の最終確認 2026-09-28

Hattie

指導法

ブロック学習の落とし穴

「かけ算20問 → わり算20問」のように同じ種類を連続で練習する方式。直後は成績が良く見えるが、時間をおいたテストでは問題を混ぜる「交互練習」の方が成績が高い実験が多い。

学習効果
-3ヶ月
3月時点で、通常より約3ヶ月分学力が低下する傾向
エビデンス
★★★☆☆
コスト
¥····
対象
算数 · 全教科
全学年
Evidence Breakdown

出典別のエビデンス

Hattie (Visible Learning)

Hattie の効果量は他のメタ分析と比べて楽観的な傾向があり、再現性に疑問が示されている場合があります。参考値としてお読みください。詳しくは エビデンスの文脈 を参照。

Visible Learning(2017 年版一覧・現行のデータベース MetaX とも)に、ブロック練習そのものの項目は無い。関連する項目は交互練習(Interleaved practice)。

Technical Appendix 研究の詳細
研究数
59 件
総サンプルサイズ
k=238 効果量、158 サンプル(主に大学生。平均年齢が報告された 62 サンプルでは、平均 77 歳の 1 研究を除くと 9.5〜37 歳。絵画・数学・単語など素材横断)
効果量
全体で交互練習 Hedges' g = 0.42。材料別: 絵画 +0.67 / 数学 +0.34 / 単語 -0.39(単語暗記のみブロック練習が有利)。効果の目安 -3ヶ月は、交互練習と比べたときの値(何もしない場合との比較ではない)。このページが主に扱う算数に近い数学課題の g = 0.34 を、ブロック練習の側から見て換算した(d=0.1 ≈ 1ヶ月、0 に近い整数に丸め)。全体の g = 0.42 で換算すると -4ヶ月
主要エビデンスレビュー
エビデンスの限界

効果は学習材料の性質に強く依存する。カテゴリ間が類似していてカテゴリ内が多様な複雑材料(算数の問題タイプ判別など)で効果が大きく、単純な単語暗記ではブロック練習が有利になる。習得初期はブロック練習で基本を作り、定着段階で交互練習に切り替えるのが現実的。

日本の文脈で考慮したいこと

日本の算数ドリル・漢字練習帳は典型的なブロック練習型で、見かけの成績(練習時の正答率)は上がるが、時間をおいたテストでは交互練習に及ばないことが多い。保護者や管理職に『練習中の正答率が下がっても問題ない』と説明するには、望ましい難しさ(desirable difficulty) の概念共有が必要。

なぜこの注記があるか:エビデンスと文化的文脈

目次(8)
  1. 一言でいうと
  2. なぜ「できている感」が生まれるのか
  3. 研究が示す具体的な差
  4. ではどうすればいいか
  5. 注意したいこと
  6. 主な参考研究
  7. 関連読み物
  8. 関連する学習指導要領

一言でいうと

「かけ算の問題を20問やってから、わり算を20問」——この練習の仕方をブロック学習と言います。日本のドリルや教科書のほとんどがこの形式です。

ブロック学習は練習中の正答率が高く「できている」と感じやすいのですが、1週間後や1ヶ月後のテストでは、問題を混ぜて練習した方が成績が良かったという実験が複数あります。大学生では1週間後、中学1年生では30日後のテストで確かめられています。

この「できている感覚」と「実際の定着」のズレが、ブロック学習の落とし穴です。

なぜ「できている感」が生まれるのか

ブロック学習では「次もかけ算だ」と分かっているため、どの解き方を使うかを自分で判断する必要がありません。同じパターンを繰り返すだけなので、練習中はスラスラ解けます。

しかし実際のテストや日常では「これはかけ算? わり算? 足し算?」と自分で判断する力が求められます。ブロック学習ではこの判断力が育ちません。

認知科学ではこのズレを「流暢性の錯覚」と呼びます。スラスラできる = 身についている、とは限らないのです。

研究が示す具体的な差

ブロック学習交互練習(問題を混ぜる)
練習中の正答率高い(89%)低い(60%)
1週間後のテスト低い(20%)高い(63%)

※ Rohrer & Taylor (2007) の実験より(大学生 18 名が立体の体積の求め方を学ぶ。練習の仕方はランダムに割り付け)。交互練習群は1週間後に3倍の正答率。中学1年生 126 名が約3ヶ月練習した学校での研究(Rohrer, Dedrick & Stershic 2015)でも、30日後のテストで交互練習の方が高い成績でした。

練習中に「難しい」「混乱する」と感じるのは、脳が深く処理している証拠です。これを「望ましい難しさ(desirable difficulty)」と呼びます。

ではどうすればいいか

ブロック学習が「悪い」のではなく、ブロック学習だけに頼ることが問題です。

  • 新しいことを学ぶ段階では、ブロック学習(同じタイプを繰り返し)で基本を身につける
  • 定着させる段階では、交互練習(前の単元と混ぜる)で判断力と長期記憶を鍛える

具体的には:

  • 算数の宿題で、今週の問題に先週の問題を2〜3問混ぜる
  • 漢字テストで「今週の漢字」+「前に習った漢字」を出す
  • 小テストを単元完結にせず、過去の内容も含む累積型にする

注意したいこと

  • 子どもは「混ぜると難しくなった = 自分ができなくなった」と感じやすい。「難しいのは良いことだよ」と理由を説明することが大切
  • 保護者から「ドリルの点数が下がった」と指摘されることがある。練習中の正答率は学力の指標ではないことを共有する
  • 日本の教科書・ドリルのほとんどがブロック形式なので、教師が意識的に混ぜる工夫が必要

主な参考研究

  • Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35(6), 481–498. — 大学生を対象に、数学の問題(立体の体積)で交互練習の効果を調べた実験。1週間後のテストで3倍の差。
  • Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S. (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology, 107(3), 900–908. — 中学1年生 126 名を対象に、約3ヶ月の数学の練習を交互練習とブロック練習で比べた研究。30日後のテストで交互練習が上回った(効果の大きさを示す指標 d = 0.79)。
  • Brunmair, M., & Richter, T. (2019). Similarity matters: A meta-analysis of interleaved learning and its moderators. Psychological Bulletin, 145(11), 1029–1052. — 59 研究・238 効果量のメタ分析。交互練習の効果は全体で g = 0.42、数学課題で 0.34。単語の学習ではブロック練習が有利(-0.39)。このページの効果の目安の根拠。
  • Rohrer, D. (2012). Interleaving helps students distinguish among similar concepts. Educational Psychology Review, 24, 355–367. — 交互練習が「概念の区別力」を育てることを理論的に説明。
  • Dunlosky, J., et al. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. — 10の学習法を評価。交互練習は「中程度の有用性」(ブロック練習は評価対象外)。

関連読み物

  • Bjork, R. A. (1994). Memory and metamemory considerations in the training of human beings. In J. Metcalfe & A. Shimamura (Eds.), Metacognition: Knowing about knowing (pp. 185–205). — 「望ましい難しさ(desirable difficulty)」の考え方を論じた章。

関連する学習指導要領

関連項目: 交互練習(インターリービング) — 交互練習の効果と具体的な実践方法を詳しく解説

参考にしている情報源
Rohrer (2012) — Interleaving helps students distinguish among similar concepts
このページを引用するときの表記例

「ブロック学習の落とし穴」EduEvidence JP(CC BY-SA 4.0)。https://edu-evidence.org/strategies/blocked-vs-interleaved/ (出典の最終確認 2026-09-28、参照 YYYY-MM-DD)

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